ロッテから金銭トレードで新加入の楽天涌井秀章投手(34)が移籍後初先発で勝利を挙げた。中田の先制本塁打など2失点しながらも、追加点を許さないベテランらしい粘りの投球。4番浅村栄斗内野手(29)の逆転3ランを呼び込んだ。これでチームは開幕から5試合で4勝1敗。投打がガッチリとかみ合う最高のスタートダッシュだ。

  ◇    ◇    ◇

失点しても冷静に。傷口は最小限でとどめる。さすがは百戦錬磨の涌井だ。「中田翔にホームランを打たれましたけど、あとのイニングはしっかり先頭を切ることができた。守りやすいし、投げやすいという環境が整うので」。中田に1発を撃たれた2回以外はすべて先頭を打ち取り、7回104球で4安打2失点、5三振1四球。勝利のお立ち台ではテレビの向こうの楽天ファンへ向け「はじめまして涌井です。これからもっともっと勝ちたいと思います」と呼び掛けた。

21日に34歳の誕生日を迎えたが、日本ハムのルーキー左腕河野が最後に息切れしたのとは対照的に、スタミナ、バランスのとれたフォームに衰えは見えない。三木監督と伊藤投手チーフコーチから「次もあるから」と説明をうけ、7回で交代。だが「もう1回いくつもりで、まだまだ投げられる感じだった。体調的に良かったのかなと思います」と余力を残しての交代だった。

西武で85勝、ロッテで48勝しているが、西武初登板、ロッテ初登板ともに黒星。3チーム目で初めて初登板での白星をつかんだ。「ホッとしました。うれしいというよりもホッとした気持ちの方が強いかな」。その支えになったのが家族だ。コロナによる活動休止中も女優で妻の押切もえ、長男の存在が涌井の力になった。夫人がインスタグラムに投稿した誕生日の動画には「パパおめでとう」と祝福する息子を抱きしめる涌井の姿があった。

試合後はプロ初セーブを挙げた守護神森原からウイニングボールを渡された。「森原が持ってきたので。別にって感じです(笑い)。(過去の記念のボールは)飾ってないな。プロ初勝利と100勝とか。それくらいかな」と不敵にニヤリ。最後まで涌井らしかった。【千葉修宏】

▽楽天伊藤投手チーフコーチ(涌井について)「ポイントポイントでしっかり自分のボールを投げられていた。中田に打たれた後もしっかりバッターと勝負してアウトを取っているし、逆転した後もしっかり3人で終わって帰ってくる。相手に流れを与えない素晴らしいピッチングだった」