東北に愛された男がチームを去ることになった。楽天は25日、ゼラス・ウィーラー内野手(33)と巨人池田駿投手(27)の交換トレードを発表した。外国人枠の関係で2軍調整を余儀なくされ、プレー機会を求めての移籍。楽天で選手生活をまっとうすることを希望していた人気者が「選手としてまだやらなければならないことがある」と新天地へと旅立つ。

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突然の発表だった。出場機会を求めるウィーラーにプレーする場所を与え、なおかつ手薄な左投手を補強するというチームの方針でトレードが決まった。本人の仙台、そして東北への愛は本物だったが、選手としてまだやれる以上、2軍に甘んじるつもりはない。「日本でプレーする機会をいただいたことには感謝してもしきれません。イーグルスのメンバーとしての東北での時間を忘れません。ただ私にはプレーヤーとしてまだやらなければならないことがあります」と移籍を選んだ。

常々「楽天で選手生活をまっとうしたい」と“生涯楽天”を希望していた。ただ同時に「契約については自分だけで決められるものじゃない。成り行きを見守るしかない」とも。石井GMは「ウィーラー選手のようにキャリアをしっかり積んできた選手が1軍の舞台でできないのは心苦しかった。プレーする環境がほしいということだったので、その場所を探した」と説明。その上で「トレードは悪いものではない。出場機会があることがプロ野球選手にとって大事。彼が1軍で活躍してくれることが大事だと思ってます」と巨人での活躍を願った。

チームに与えた影響は計り知れない。通算596試合に出場し、打率2割6分2厘、106本塁打、345打点。その数字以上に人柄が評価された。アニメ「ハクション大魔王」にそっくりの親しみやすい風貌と、いつでも全力で野球に取り組む姿勢。18年には外国人選手で初めて副将を務め、攻撃中にベンチから飛び出し、三塁コーチさながらに腕をグルグル回して雰囲気を盛り上げたこともあった。SNSにはファンからの「新天地での活躍を祈ってます」というコメントがあふれた。【千葉修宏】

◆ゼラス・ウィーラー 1987年1月16日、米アラバマ州生まれ。07年ドラフトでブルワーズから指名され契約。12年にオリオールズ、14年にヤンキースへ移籍。メジャー通算29試合で2本塁打、5打点、打率1割9分3厘。15年に楽天入り。17年にベストナイン獲得。19年に来日通算100本塁打を達成。NPB通算596試合、106本塁打、345打点、打率2割6分2厘。178センチ、100キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸2億円。