神宮にいた選手、球場には来られないファン、誰も諦めていなかった。ヤクルトは、9回に西浦直亨内野手(29)の代打逆転サヨナラ3ランで、劇的勝利を飾った。「入ってくれ」。みんなの思いが、打球に乗った。1点を追う9回2死一、二塁。井野に代わり西浦がコールされた。阪神藤川の2球目、真ん中高めの直球145キロをとらえた。打球は伸びて左翼のフェンスを越えた。チームメートが待つ本塁へ、ヘルメットを高々と放り投げて駆け込んだ。「自分を信じて、自分のスイングをするという思いで(打席に)入った。すごく喜んでくれたので、うれしかった」と話した。

開幕前の自主トレ期間、普段は一緒に練習する機会のない投手陣と体を動かした。幾多のケガを乗り越え、体と向き合ってきた近藤らベテランのケアやストレッチを吸収。練習試合では好調な打撃面でアピールしたが、開幕直前に上半身のコンディション不良。それでも、開幕1軍登録の枠を空けて回復を待ってくれた指揮官の思いに応えた。

高津監督にとっては初のサヨナラ勝ち、そして初の連勝で、勝率5割に復帰した。西浦の頭をごしごしとなで「打った瞬間、勝ったと思ったので、うれしかった。3密は禁止しているけど、なってしまった。解禁になったら喜びを味わえたらいいなと思う」と笑顔。守護神として、現役時代から1点の重みを知る。「こういう展開を取る取らないで、勝てる、勝てないチームの差になってくる」。この1勝が、明日につながる。【保坂恭子】