ヤクルトが劇的勝利で3位に浮上した。4番村上宗隆内野手(20)が同点の9回無死満塁、広島スコットから自身初のサヨナラ満塁弾で試合を決めた。チームは2連勝で2カードぶりに勝ち越し、今季初の貯金1。昨季の課題だった本拠地の勝率の悪さを払拭(ふっしょく)し、神宮15連戦最後の対戦となるDeNA戦に臨む。

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打った瞬間に確信した村上は悠々と歩き出し、右手のバットを天高く掲げた。「入ったな、勝ったなと思いました。自分のスイングと感覚はすごく良かった」。自身初のサヨナラグランドスラムは無人の左中間席に吸い込まれた。走りだすと、カクテル光線でダイヤモンドが輝きを増した。

2週間前の雪辱を果たした。6月19日の中日戦、延長10回2死満塁。今年1年を占う重要な局面で空振り三振に倒れていた。「開幕戦で満塁で回ってきた時に三振してしまった。その借りを返せたかなと思います」。2ストライクからの3球目を冷静に捉えた。「何とか前に飛ばそうと。すごく余裕を持って打席に入れている」。4回の適時二塁打も2ストライクから。追い込まれてから強かった。

突き放されても食らい付く。序盤に4点を先行されたが追いついた。再び勝ち越されてもまた同点に。いずれも5番西浦の1発。村上は「ヤクルトはあきらめないのが持ち味。僕の前の青木さんや後ろの西浦さんが心強い。楽に打席に立たせてくれる。流れに乗っていける気にさせてくれる」。4番の責任感を持ちつつものびのび打棒を振るう。

本拠地15連戦でスタートという異例のスケジュールも11試合を消化し、6勝5敗と貯金をつくった。昨季、神宮での戦績は27勝38敗。勝率4割1分5厘と地の利を生かせなかった。高津監督は「そこを何とかしたいと思って開幕した。みんなミスをしながら、勉強しながら成長している。いい締めくくりをしたい」。今日3日からは神宮連戦最後のカードとなるDeNA3連戦だ。3割30発100打点を掲げる若き4番はここまで打率3割7分5厘、3本塁打、13打点。村上が打席に立つ。それだけでプレッシャーを与える打者に、なりつつある。【鎌田良美】

▼村上が満塁サヨナラ本塁打。村上の満塁本塁打は昨年7月3日広島戦以来2本目、サヨナラ本塁打は19歳6カ月のプロ野球最年少記録をマークした昨年8月12日DeNA戦以来2本目。満塁サヨナラ本塁打は昨年9月4日山田哲(ヤクルト)以来で通算85本目になるが、村上の20歳5カ月は60年9月21日王(巨人)の20歳4カ月に次いで2位の年少記録だ。21歳未満でサヨナラ本塁打を2本以上は中西(西鉄)坂本(巨人)に次いで3人目、満塁本塁打を2本以上は6人目で、両方を2本以上は村上だけ。