広島鈴木誠也外野手(25)が5年連続2桁本塁打となる10号ソロを放った。9点と大差をつけられ、敗戦ムード漂う中で、悔しさをぶつける笑顔なき1発だった。チームは巨人戦7年ぶりの5連敗。6カード連続勝ち越しなしで、借金は今季最多の「7」に。借金「6」から逆転Vを果たした79年のデッドラインを越えてしまった。

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笑顔なき1発だった。9点を追う8回、1死から鈴木誠が宮国の高め140キロを完璧に捉え、左翼スタンド上段に放り込んだ。大差が開いた悔しさをかみ殺すように、ダイヤモンドをゆっくりと1周。ベンチに戻っても表情は変わらなかった。5年連続の2桁本塁打到達にも「特に意識も何もしていません。こういう試合展開になってしまったので、とにかく雑にならないように心がけてプレーしました」と冷静だった。

初回の攻撃で2死二塁から鈴木誠が左中間を破る適時二塁打を放って先制。しかし先発床田が2回に同点、3回にあっさりと逆転を許した。6回には3番手ケムナが岡本に満塁弾を食らうなど、打者一巡の猛攻を受け、この回一挙6失点。完全に試合の流れを失った。

打線がなかなかつながらない。巨人先発田口から7安打を放ちながらも、2点を奪うのが精いっぱいだった。高ヘッドコーチは「こういう試合展開では打つ打つになって難しいところ。僅差のうちに打線が活発になってくれたら…」と嘆いた。守備でも3回無死一、二塁から丸のバント(内野安打)処理をした松山が一塁へ悪送球。二塁走者が生還し、勝ち越された。同コーチは「あれはまずい守備だった。ボディーブローのように1点1点ね。ミスにつけ込まれた」と悔やんだ。

V奪回への道は遠のくばかりだ。過去最大の逆転Vは、佐々岡監督が現役時代に17勝を挙げ、シーズンMVPに輝いた91年。このときは7・5ゲーム差をひっくり返して優勝した。しかし7月28日中日戦の敗戦で8・5ゲーム差となり、7年ぶりの巨人戦5連敗で9ゲーム差まで開いた。

さらに借金は今季最多の「7」に。借金「6」から優勝した79年のデッドラインも越えた。佐々岡監督は「選手は勝つために一生懸命やっている。また明日集中力を持ってやるだけです」と懸命に前を向いた。主砲の一振りのように、全員で意地をみせていくしかない。【古財稜明】

▼広島が敗れて12勝19敗4分けの借金7。過去に広島がリーグ優勝を果たした年の最大借金は79年の6で、今季はこれを超えた。また優勝年に首位から離された最大ゲーム差は91年の7・5差だが、1日現在首位巨人とは既に9差。借金、ゲーム差とも、広島が今季Vなら球団史上最大の逆転優勝となる。