劇画デビューだ。巨人から移籍したロッテ沢村拓一投手(32)が8日、入団初日の日本ハム戦(ZOZOマリン)でいきなり剛球を披露した。6回に3番手で登板し、ド迫力の3者三振。“ロッテ沢村”を強烈に印象づけた。朝9時に古巣に別れを告げて入団会見に臨み、強風のマリンで新天地初登板。長い1日の終わりは、5連勝の喜びを新しい仲間たちと分かち合った。さぁ、逆転優勝へ。頼もしすぎる男がやって来た。

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ZOZOマリンを、鳥肌が覆った。午後7時45分。「ピッチャー、沢村」のアナウンスが拍手に加え、うれしい悲鳴を呼び起こす。「名前を呼ばれた時の声援は絶対に忘れません」。興奮と温かみに満ちたスタジアムの熱狂は今季最大94・5デシベルを記録。どんなエキサイティングな場面でも限界だった91デシベルを一瞬で超えてみせた。

149キロ、153キロ。立て続けの圧に、どよめきが続く。不安視された制球難も吹き飛ばす。直球でカウントを整え、最後は落とす、落とす、落とす、叫ぶ。140キロ台後半のスプリットで渡辺、大田、ビヤヌエバから3者連続空振り三振。「後ろの投手にゼロで渡すことができて良かったです」とベンチへ戻る沢村に、スタンディングオベーションが発生した。井口監督までも「球場の雰囲気が一変した」と興奮した。

人生の転機は突然やって来る。12時間前、ジャイアンツ球場にいた。「たくさん愛情を注いでもらったなと思います」としみじみ話した。山あり谷ありの巨人時代が終わった。2年前、尊敬する内海が西武に移籍する時に約束した。「おれがいなくなったら、投手陣を支えていってくれよ」。期待に応えたとは言えない。自身も移籍が決まり、電話で「約束を守れませんでした」とわびた。

優しい言葉が返ってきた。「いい経験になるから、新しいところで頑張れよ」。野球はチームスポーツ。心に刻み、やって来た。「まずは溶け込みたいですね、ロッテに」と願う。

どこにいても、感謝は忘れない。「ボク1人じゃない。支えてくださる方々のため、1日1分1秒たりともムダにできないなと思ってます」。午後8時54分、5連勝が決まり、新しい仲間とのエアタッチもうれしい。背番号は57。間に合わず、福嶋打撃投手の106番のユニホームを借りて投げた。「はじめまして、沢村です」。お立ち台での第一声にマリンがまた、強く温かい拍手に包まれた。【金子真仁、久保賢吾】