巨人原辰徳監督(62)が「打撃の神様」で「V9監督」の川上哲治氏を超える、球団史上最多の監督通算1067勝目を挙げた。元ヤンキース監督のジョー・トーリ氏(80)、ソフトバンク王貞治球団会長(80)、巨人長嶋茂雄終身名誉監督(84)と野球界の偉大な先人から祝福のメッセージも届いた。同点の8回にルーキーイヤーから育てた坂本に決勝ソロが飛び出し、貯金は今季最多の21。2年連続Vへ突き進んでいく。

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原監督が、中堅後方の大型スクリーンに向かって深々と頭を下げた。元ヤンキース監督のトーリ氏、王球団会長、最後は長嶋終身名誉監督が左手のガッツポーズで祝福。コロナ禍で東京ドームに集まった4985人の拍手が響く中、1人静かに感謝の意を示した。

「先輩として燦然(さんぜん)と輝く神様。川上さんを、何て言うんでしょうか。1つ超えられた。信じられない気持ちでいっぱいです」

85年目を迎えた球団史でわずか12人の監督の中、積み上げた1067個目の白星が歴史に名を刻む1勝になった。02年に就任してから14年目。終始一貫、貫き通した信念は「チームの和をつくるのは実力至上主義。実力のある人をねぎらい、1軍に、そしてスターティングメンバーにする」。

今季も69試合で58通りの打順を組み、最善策を模索する。1点を追う5回は無死一塁からエンドランを仕掛け、動いて同点に追い付いた。殊勲打の吉川尚がオーバーランで三塁アウトになると「欲を言えば、次は(炭谷)銀ちゃんでしたから、ノーアウト三塁でエンドランをやろう思ってました」。8回は新人時代から育てた坂本のソロで勝ち越し、苦楽を共にする選手たちからも祝福された。

9月に入り、勝負の13連戦(1試合中止)の真っただ中で、10試合を終え8勝1敗1分け。選手に「実力」を出させるために、環境づくりも惜しまない。1066勝目を挙げた9日の中日戦はデラロサ、中川を温存し、大量リードを奪った5日の阪神戦はデラロサ、大竹を試合中にロッカー室に戻した。連戦中は試合前の打撃練習やシートノックを減らし「疲れちゃうから」と、試合で100%の力を出す準備を整えている。

メリハリを付けた戦いで、1点差の接戦を制し、貯金は今季最多の21。「浸っている余裕はありません。偉大な大先輩の記録を少し超えたことは心の中の宝物にして、明日へ挑戦していきたい」。常にフラットな気持ちを保ち、次の1勝を積み重ねていく。【前田祐輔】