天国にささげる逆転星-。ソフトバンク打線が2点を追う6回に、川瀬晃内野手(23)がチーム29イニングぶりとなる反撃の適時打を放った。7回にはアルフレド・デスパイネ外野手(34)が勝ち越しの2点適時打で逆転勝ち。16日朝に川村隆史3軍コンディショニング担当(55)が遠征先の神戸で急逝。チーム一丸で白星を届けた。

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逆転勝ちを飾ったソフトバンクの選手たちが、ロッカールームに集められた。緊急で開かれた全体ミーティング。そこでまさかの訃報が伝えられた。川村3軍コンディショニング担当がこの日朝に遠征先の神戸で急逝。92年からダイエーに入団。コンディション担当として、常勝チームを支えてきた。試合前の円陣で盛り上げ役を買って出るなど明るい性格で、選手から慕われる存在。ミーティングでは涙を流す姿もあった。

監督、コーチには試合前に伝えられ、首脳陣は強い決意を持って、日本ハム戦に臨んでいた。工藤監督は現役時代から川村さんと関わりがあった。「元気に頑張っている姿がボクの元気になっていた。こんな形でお別れになるとは…。絶対に勝つぞ、天国に届けるという思いでやりました。川村くんが天国から力をくれたと思う」と試合後の会見では目に涙を浮かべた。

天国にささげる1勝は、打線のつながりから生まれた。2点を追う6回。相手失策や四球も絡み2死満塁。打席の川瀬は「自分の守備のミスもあったし、何とか取り返す気持ちで、このチャンスは思い切って打ちにいきました」と左前にはじき返し、1点を返した。2回の守備では失点につながるエラーをしていた若鷹がチーム29イニングぶりのタイムリーを放った

打線はこれで勢いづいた。7回1死満塁で4番柳田が押し出しの四球を選び同点。続くデスパイネが鋭い打球で中前に運んだ。「みんながつないでくれたチャンスだったし、ピッチャーも抑えてくれていたので勝ち越せて良かったです」。勝ち越しの2点適時打で試合を決めた。

13日西武戦は0封負け。前日の日本ハム戦も、9回にソロ本塁打が2本出ただけ。この日も悪い流れは続いた。初回は相手の暴投で先制した後、1死一、二塁からデスパイネとグラシアルが凡退。2回も1死三塁の好機で無得点に終わった。3回から5回の攻撃は3人ずつで終わり。またホームベースが遠い…という展開をチーム一丸で破った。

逆転勝利で連敗はストップし、2位ロッテとのゲーム差は1・5に広がった。指揮官は「よく打ちましたね、本当に。つながったと思います」と選手たちをねぎらった。川村さんの思いを胸に、3年ぶりのリーグ制覇へ突き進む。【山本大地】