前日、夕飯を食べようとしていた国学院大・川村啓真外野手(3年=日本文理)の携帯が鳴った。鳥山泰孝監督(45)からだった。

「川村らしく、攻撃的に振っていきなさい。いい時のことを思い出して」

開幕から3番を任されてきたが、3試合で9打数2安打。四球でつなぐことはあっても、本来の打撃ができていなかった。「『監督の言うとおりだな』と。吹っ切れました」。力みが抜け、この日を迎えた。

8回。期待に応える最高の場面がやってきた。6-6の2死一、二塁。直前に5点差を追い付かれていた。「打てる球だけを打とう」と肩の力を抜いた。駒大・竹本に3球で追い込まれたが、低めの厳しい球は見送った。「追い込まれてからは落ちる球も頭に入れて。最後の最後、打てる球が来ました」と内角真っすぐを強振。右越えに決勝3ランをたたきこんだ。

お祭り騒ぎのベンチで、鳥山監督には込み上げるものがあった。「監督冥利(みょうり)に尽きます。こんなうれしい瞬間は、そうそうない。私の心に大きなエネルギーが宿った瞬間でした」。選手に対し、わざわざ電話で思いを伝えることは、あまりないという。「今日の朝でもいいかな、とは思ったのですが」。駒大対策を重ねる中で、できるだけ早く伝えたくなった。

監督と選手、両者の思いが合わさり、実った決勝弾。チームは開幕から4連勝だ。今季は2回戦総当たりの10試合を戦い、勝利数で順位を決める。4勝とし、単独首位に立った。川村は「久しぶりに、いい感覚で打てました。ひとつ、壁を越えたのかな。スタメンで出させてもらっている。もっと成長できるよう、ホームランをきっかけにしたい」と誓った。【古川真弥】