野球部ではなくてもプロになれる。BC・神奈川のバッテリーが野球界の常識を覆しつつある。5日、シーズンホーム最終戦で、杉浦健二郎投手(22)が先発マウンドに立った。投球を受けたのは根本和也捕手(27)。先発初コンビを組んだ2人は共に高校、大学と野球部に未入部だった。

杉浦は麻溝台(神奈川)時代、バドミントン部に所属。中大に進学後、仲間と草野球チームを立ち上げた。「就活のネタになれば」と受験した19年のトライアウトでは、150キロを計測。今季参入した神奈川に入団した。

根本に至っては野球経験は小学生まで。進学した中学に野球部がなかったため、断念した。立大時代はソフトテニス部で全国大会に出場。一般企業に就職したが、一念発起。17年7月に退職し、本格的に硬式野球の道へと進んだ。2月のトライアウトを受け、練習生として神奈川に入団。ブルペン捕手を務めながら、チャンスを待った。8月に正式に選手登録され、出場機会をつかんだ。

杉浦は2回を投げて無安打2失点で降板。この日の最速は148キロだった。四球や暴投で失点し、制球に苦しんだが、手応えはつかんだ。それまで公式戦での速球は140キロ台前半と伸び悩んでいた。「左打者への恐怖心がなくなったことが大きい」と分析する。インステップ気味からスリークオーターで繰り出す投球フォーム。ボールが引っ掛かることが多かったが、思い切り腕を振るようになってきた。

NPBを目指すのは今年のみと決めて入団した。課題はまだ多いが、1年を振り返って「自分はまだまだ伸びると思うようになった」と手応えをつかんだ。もし今秋のドラフトで指名されなくても、来年がある。「シーズン残りの試合で投げて気持ちが変わるかも」と現役続行を示唆した。鈴木尚典監督は「来年は先発ローテに入って10勝してもらいたい」と期待する。それだけのポテンシャルは持っている。

異色な経歴同士のバッテリー。根本は「グラウンドに立っていたらみんな一緒」と割り切る。共に実力で成り上がってきた。チームの勝利のため、全力プレーで戦い続ける。2回1死満塁で、中前へ一時同点となる2点適時打を放って、プロ初打点。記念すべき一打で相棒の負けを消した。昨季は関西独立リーグ・堺でプレーしたが無安打だった。「神奈川に入って、初安打を打てて今日は初打点。異色同士の杉浦ともバッテリーを組めた。順調すぎる」と照れくさそうに笑った。

チームは地区CS進出を決めている。根本は「個人的な目標はチームの目標。優勝できるように自分のできることをやっていきたい」と静かに話した。ポストシーズンを勝ち進めば、史上初の参入初年度優勝となる。常識破りの選手たちが野球界の新たな歴史を刻む。【湯本勝大】