巨人、阪神、西武、日本ハムなどがドラフト1位候補に挙げる近大・佐藤輝明内野手(4年=仁川学院)が、立命大戦で通算13号を放ち、巨人などで活躍したOBの二岡智宏(現巨人3軍監督)がマークした82年以降の新リーグの本塁打記録に並んだ。

阪神など4球団が視察し、西武渡辺GMはパワーを絶賛した。佐藤争奪戦はますます過熱しそうだ。

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ボールをたたきつぶすほどの破壊音とともに、雲ひとつない秋空へ高々とアーチを描いた。3回無死一塁。近大・佐藤の打球は右翼席へ消えていった。「打った瞬間、行ったと思った」。厳しく攻められた内角の138キロをしっかり捉え、今季2号の2ラン。ネット裏で視察した西武渡辺GMも「大きかったね。逆風だったからね」と驚くパワーだった。

通算13本目は近大OBで元巨人の二岡智宏が98年にマークした新リーグ記録に並んだ。「もとから記録のことはあまり気にしていない。1本出たのはよかったですが、仕事できなかった」。同点の7回1死満塁では空振り三振に倒れ、チームもサヨナラ負け。記録達成より自分を責めた。

阪神、巨人の「恋人」佐藤の評価はここにきて高まるばかり。前日11日には日本ハム吉村GMやDeNAの三原球団代表も視察。DeNAで佐藤に密着する安部スカウトは「うちの球場(横浜スタジアム)なら本塁打も多く打てる。二遊間で使ってみても面白い」と、長打力に加え、守備力も評価している。外野でも内野でもチーム事情に合わせたポジションで、長い間レギュラー、主軸を任せられる逸材に競合覚悟で入札するか、各球団は決断を迫られている。

この日はスタンドに両親と母方の祖父母が応援に駆けつけた。10歳の弟の少年野球の世話のため、週末は観戦できない母晶子(まさこ)さん(48)の前では今年初めての1発。10日の雨天中止で月曜に開催された試合で親孝行した。実家に帰れば、パワーと器用な手先で手作り餃子をこねる手伝いも。「LINE(ライン)での会話はぶっきらぼうなんです」と笑う母の6月の誕生日には、花と料理のレシピが書かれた本を贈った。3兄弟を育ててくれた母への感謝はいつも忘れていない。

プロを意識し始めた高校2年、自分の部屋から勉強机を外し、ベンチプレスができるトレーニング場に変えた。その部屋は今もそのままという。「背の大きさは譲れたかな」と話す身長168センチの母と柔道86キロ級で活躍した父博信さん(53)のDNAを引き継ぎ、たっぷりの愛情を注がれて育った佐藤が、どこのユニホームを着るのか。ドラフト会議まで目が離せない。【石橋隆雄】

◆佐藤輝明(さとう・てるあき)1999年(平11)3月13日、兵庫・西宮市生まれ。甲東小1年から甲東ブルーサンダースで軟式野球を始める。甲陵中では学校の軟式野球部に所属。仁川学院では高校20本塁打。近大では1年春からレギュラー。2年春から3季連続ベストナインに選出(2年春は外野手、2年秋と3年春は三塁手)。リーグ戦通算13本塁打。ベンチプレス130キロ、左右の握力75キロ。父博信さん(53)は日体大の柔道部(86キロ級)で、現在は関学大の准教授。187センチ、94キロ。右投げ左打ち。