ソフトバンク工藤公康監督(57)がポストシーズンさながらの「鬼采配」で勝利をたぐり寄せた。同点の6回無死一、二塁。ベテラン松田宣への代打川瀬が送りバントに成功。続く中村晃が決勝打を放った。さらに1死満塁で代打長谷川勇也外野手(35)がプロ初の満塁本塁打を放ち、試合を決めた。5連勝で2位ロッテと今季最大4ゲーム差に広げ、最短で18日にも優勝へのマジックが点灯する。

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予想外のコールに球場がざわついた。「代打川瀬」。百戦錬磨の松田宣に代わって、今季売り出し中の若鷹が送り出された。場面は同点に追いつかれた直後の6回。柳田が四球、グラシアルが安打で無死一、二塁の好機だった。工藤監督は「追いつかれた後でしたし、なんとしてもこの回で点を取らないと、という思い。マッチ(松田宣)には申し訳ない思いもありましたけど…」と振り返る。川瀬はきっちり送りバントに成功。続く中村晃が右前に適時打を放った。ポストシーズンのような勝負手で決勝点をもぎ取った。

とどめを刺したのは帰ってきたベテランだ。勝ち越した後の6回1死満塁で長谷川が代打で登場。追い込まれながらも内角いっぱいのシンカーを右翼席へ。「自分の打ちたい球だけをひたすら待って、そんな感じでいきました」。技ありの1発は今季1号で自身初の満塁本塁打となった。

今季5年ぶりに開幕スタメン出場を勝ち取った長谷川は、8月1日に新型コロナウイルスの陽性判定を受けた。練習に戻るまで1カ月以上を要した。「1軍に来てから『1カ月のブランクは大変だったな』というのを実感した。そこからいろんな投手を見て、だんだんクリアになってきた」。9月末に1軍復帰してから、これが初打点。実戦どころかグラウンドからも離れた気の遠くなるような期間を乗り越え、打撃職人の感覚を取り戻した。

チームは5連勝で、敗れた2位ロッテとは今季最大4ゲーム差をつけた。早ければ18日にも3年ぶりのリーグ制覇への優勝マジックが点灯する。この日は101試合目で、指揮官がかねて勝負のポイントとしてきた「残り20試合」を切った。V奪還へ、ラストスパートに入る。【山本大地】

▽ソフトバンク川瀬(6回、松田宣の代打で犠打)「二塁走者が柳田さんだったので、あまりコースを狙わずに打球を殺すよう意識しました」

▽ソフトバンク中村晃(6回に決勝打)「晃(川瀬)が厳しい場面でのバントを決めてくれたので、勇気をもらいました。ランナーをかえせて良かったです」

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◆ソフトバンクの最短M点灯は18日 ソフトバンクが16~18日楽天戦に3連勝、ロッテが日本ハム戦に3連敗すると優勝マジック10が出る。ロッテ3敗の場合、ソフトバンクは2勝1分けや1勝2分けでもM10が点灯する。