阪神、巨人、オリックスなどが今秋ドラフト1位候補に挙げる近大・佐藤輝明内野手(4年=仁川学院)が、18日の関西学生野球秋季リーグ関大戦で、リーグ通算本塁打記録を更新する14号を放った。優勝を争う関大戦の延長11回タイブレークで、決勝弾となる3ラン。26日ドラフト会議の目玉であることを証明する強烈な1発だった。

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アマ球界屈指のスラッガーが勝負どころで本領を発揮した。優勝を争う関大戦は両軍で46人が出場した総力戦。延長11回無死一、二塁で始まるタイブレークで、近大・佐藤が打席に入った。「逃げる球。うまくひろえた。打った瞬間でしたね」。相手のサイド右腕の真ん中低めシンカーをすくい上げ、ほっともっと神戸の夜空へ高々とアーチをかけた。決勝弾となる右翼席への3ラン。佐藤はパーンと手をたたきながら、ダイヤモンドを1周した。

試合を決めるメモリアルアーチだ。OBで元巨人二岡が記録したリーグ通算記録を抜く14号。新型コロナウイルスの影響で春季リーグは中止。この秋も勝ち点制ではなく2試合ずつ10試合総当たりと厳しい条件の中での記録更新となった。「うれしいですね。勝ちたい、打ちたいの積み重ねで記録を更新した。この記録を更新したいと思ってやったことはない」と勝利を求めた末の快挙だった。 この日は阪神、ソフトバンク、巨人など7球団10人が視察。13日に1位を公表したオリックスの下山スカウトは「すばらしい。ああいうところでまわってきて、期待の中で記録をつくる。そんな星のもとに生まれてきたのだと再確認しました」と絶賛した。

田中秀昌監督(63)は「近大の環境が合った。すごく無名の学校から来てプロに行くというところまできた。1年の時は扇風機みたいだったが辛抱してここまできた」と話す。仁川学院高(兵庫)では3年生から本塁打を量産したが、チームの実績もなく、なかなか進学先が決まらなかった。3代前の監督で長く同校を指揮した馬場弘行さんが、田中監督が上宮高校で監督をしているころからの付き合いだったことから電話した。3年生の6月に近大で練習を見てもらい、田中監督が「ワンスイングで決めた」とほれ込んだ。運命の出会いからドラフト1位候補になるまでに成長した。

リーグ戦はあと1試合。「12球団どこでもご縁があれば。今はリーグ戦のことだけ」。佐藤の頭には最後の関大戦しかない。【石橋隆雄】

◆佐藤輝明(さとう・てるあき)1999年(平11)3月13日、兵庫・西宮市生まれ。甲東小1年から甲東ブルーサンダースで軟式野球を始める。6年ではタイガースジュニアに選出されたが、右肘を痛めて活躍できなかった。甲陵中では学校の軟式野球部に所属。仁川学院では高校20本塁打。近大では1年春からレギュラー。2年春から3季連続ベストナインに選出(2年春は外野手、2年秋と3年春は三塁手)。リーグ戦通算14本塁打。ベンチプレス130キロ、左右の握力75キロ。父博信さん(53)は日体大の柔道部(86キロ級)で、現在は関学大の准教授。187センチ、94キロ。右投げ左打ち。

◆関西学生野球秋季リーグの優勝争い 優勝争いは近大、立命大、関大の3校に絞られている。9試合で7勝2敗の近大が現在首位で、19日に関大との最終戦を迎える。勝てば2敗のままで、関大は3敗となり優勝争いから脱落する。24、25日の最終節で立命大が同大に連勝すれば8勝2敗で並び優勝決定戦へ。1つでも負けると近大が優勝する。近大が19日に負けると3敗となり、自力での優勝はなくなる。2敗のまま最終節を迎える立命大と関大(対関学大)がそれぞれ1勝1敗なら3校による決定戦へ、連敗なら近大の優勝。連勝なら立命大と関大が決定戦に進む。

◆近大・佐藤輝明の関西学生野球リーグ全本塁打

1号 17年9月24日、同大戦(ほっともっと神戸)2ラン

2号 17年10月6日、関大戦(南港中央)2ラン

3号 18年4月17日、関学大戦(南港中央)満塁本塁打

4号 18年5月5日、同大戦(ほっともっと神戸)2ラン

5号 18年9月28日、関学大戦(南港中央)ソロ

6号 18年10月1日、立命大戦(南港中央)ソロ

7号 18年10月2日、立命大戦(南港中央)2ラン

8号 19年4月14日、関学大戦(皇子山)2ラン

9号 19年5月26日、関大戦(わかさスタジアム京都)ソロ

10号 19年9月24日、京大戦(南港中央)3ラン

11号 19年10月13日、関大戦(ほっともっと神戸)

12号 20年9月12日、関学大戦(皇子山)ソロ

13号 20年10月12日、立命大戦(ほっともっと神戸)2ラン

14号 20年10月18日、関大戦(ほっともっと神戸)3ラン