中大の五十幡(いそばた)亮汰外野手(4年=佐野日大)が日本ハムに2位指名を受け、交渉権が確定した。中学時代には陸上100メートルと200メートルで現100メートル日本記録保持者のサニブラウン・ハキームに勝利するなど、規格外の俊足を持つ。小3で亡くした母恵子さんの「野球をしている亮汰が大好きです」という言葉を受け、陸上ではなく野球の道を選んだ。母への思いを胸に、北海道の地で活躍を誓った。

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「サニブラウンに勝った男」は緊張していた。「昨日は早く寝ようとしたけど寝られなくて」。指名された瞬間、拍手が起こると、何度も頭を下げた。マスクで表情は見えなかったが「ホッとして、和らいでいました」と明かした。日本ハムについて「ファンが熱心という印象がある。西川選手は、盗塁の仕方を動画をみて参考にした。地元に愛されるような選手になりたい」と笑顔をみせた。

特徴は足の速さ。50メートルは手動計測で5秒6、機械計測でも5秒8。サニブラウンを抑えて全国中体連の陸上短距離2冠に輝いた実績がある。プロを含めてもトップクラスだ。レッズ秋山やヤクルト青木ら走攻守そろった左打者を目標に挙げ、代走や守備だけでなく全試合スタメン出場できる選手を目指している。

性格は根っからの真面目だ。何事にも意識を高く持って取り組む。中学時代の陸上のトレーニングを野球にも導入。アップ中も1人独自のメニューを行うなど自らの武器である「スピード」を磨き続けてきた。守備では1歩目の速さも抜群で、落下地点へ最短距離で向かう力はチーム随一。異次元の守備範囲の広さを誇る。「戦国東都」でも長打級の打球をことごとく捕球し何度もチームを救ってきた。

小学3年時に亡くなった母に向けて「本当に夢をかなえられて良かった。きっと(母も)近くで見ていてくれていると思う。『これからまだ頑張るからね』と伝えたい」。母の思いも背負った韋駄天(いだてん)が、「まだ行ったことがない」という北の大地で駆け回る。【小早川宗一郎】