早大が15年秋以来10季ぶり46回目の優勝を果たした。無敗での優勝は、03年秋(10戦全勝)以来2回目。

1-2の9回2死一塁、蛭間拓哉外野手(2年=浦和学院)が慶大・生井からバックスクリーンへ逆転2ランを放った。土俵際で起死回生の1発が飛び出すと、一塁側からはナインがいっせいに飛び出した。泣き崩れる選手もいた。その裏を、エース早川隆久投手(4年=木更津総合)が抑え、胴上げ投手となった。

小宮山悟監督(55)は就任2年目、4季目で栄冠をつかんだ。いいものはいい、ダメなものはダメ。シンプルな善悪の判断が、チームを引き締め、頂点に押し上げた。

「なめた態度の学生には『ふざけるな』としかりつけるし、ちゃんとやっている学生には『頑張れ』と言います。特に、何も変えてませんよ」

1年目は、春3位、秋3位。今春も3位。消化不良のシーズンが続いたが、今季は早川を中心に、開幕から負けなしと勢いに乗った。昨季までとの指導の違いを問われても、何も変えていないという。

転機はあった。

今春リーグ戦終了後、ある主力をどやしつけた。試合中に全力疾走を怠っていたからだ。あえて、他の選手が見ている前で「ふざけた試合をしやがって!」と言葉を荒らげた。

「あれで、みんな『怒らせたらやばい』と思うようになった。その点は大きいのでは。あのカミナリを落としたことで、この秋につながっていると思う」

練習から雰囲気が引き締まった。

自らの学生時代を「それは、それは、厳しい指導だった」と述懐する。レフト後方にあった馬術部の馬のように走らされ、真冬でも素手の素振りが当たり前だった。後にメジャーリーガーにまでなった指揮官の「心のよりどころ」の4年間だ。

今の学生に対しては「理不尽はダメ」と、全く同じ指導が当てはまるとは考えない。ただ、自らの経験を伝える使命感を抱く。優勝の裏にあったカミナリには、小宮山監督の思いが詰まっていた。【古川真弥】