矢野阪神は今シーズンを2位で終え、15年連続で優勝を逃した。

来季、巨人を倒し、16年ぶりのリーグ制覇を実現するための課題はどこにあるのか。日刊スポーツ評論家陣が「V奪回へのシナリオ」と題し、リレー形式で提言。第1回は、近鉄、日本ハム、楽天で監督を務めた梨田昌孝氏(67)が状況判断の向上を求めた。

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阪神は昨シーズンから順位を2位に上げた。1つ上に上がったのだから評価することができる。でもそういう雰囲気にならないのは、巨人に負けすぎているからだろう。

対巨人は8勝16敗。他球団に勝ち越したのはミスで転んでくれた試合が多かったが、巨人にだけ異常に大きく負け越している。これが逆だったら、ひょっとしてが起きていた。

大差をつけられた要因はさまざまだが、決定的な違いは「状況判断」にあった。特に守備・走塁にいえることで、拙い守りが目立ったし、スキを突く走塁ができなかった。

例えば10月15日の中日戦(ナゴヤドーム)の9回裏1死一、二塁、ビシエドの二直で植田は二封を狙ったが、間に合わないタイミングで二塁に悪送球した。これが高橋の逆転3ランのサヨナラ負けにつながった。

「投げるべき」「投げてはいけない」のタイミングが計れていなかった。この試合では失策がつかない岩田の一塁ベースカバー遅れも目についた。数字に表れないミスが多いシーズンだった。

10月23日巨人戦(東京ドーム)ではマルテの1イニング3失策(1試合4失策)という守乱もあった。センターラインは固定しつつあるが、近本の外野守備なども不安だった。

3年連続でセ・パ両リーグワーストの失策数が示すように課題は解消されなかった。負けるべくして負けている。大山の三塁をはじめ、ある程度ポジションを固めて戦いたい。

また同15日の中日戦の2回表1死二塁、原口の三遊間を抜けた当たりに、二塁走者ボーアは二塁に止まったままだった。次の塁を狙う意識が希薄で、状況判断ができなかったプレーの典型だった。

巨人は松原、増田大、若林ら若手の積極的な好走塁が目立った。阪神と巨人のチーム80盗塁は同じだったのに、走塁では状況判断に開きがあった。

阪神にも走ることができる人材はそろっている。ここから巻き返しをはかるために、個々の守備力アップ、次の塁を狙う意識付けと判断力を身につけないといけない。

チーム作りとしてはリリーフのできる新外国人獲得も必要だろう。ドラフト1位佐藤輝明内野手(4年=仁川学院)の見極めもポイントになってくる。

【取材・構成=寺尾博和編集委員】