活動再開初日の練習を終えた部員たちが手にしたのは、グラウンド整備用のトンボだけではなかった。ほうきを手に、施設内の掃除にもいそしんだ。

東海大野球部は昨年10月、部員による大麻使用の疑いが浮上。最終的には2人の使用が確認され、3カ月の対外試合禁止、無期限の活動停止となった。新たに井尻陽久監督(68)を迎え、1日、神奈川・平塚の同大グラウンドで再び活動を始めた。まずは全部員106人が集まり、1時間にわたるミーティング。新監督は「大学に、なぜ入ってきたんだ。親御さんは結構なお金を払ってくれている。状況判断できなければ、話にならない」と訴えた。

大学4年間を「社会に出る1歩手前。野球を続けるのか、違う道に進むのか、判断する場所でもある」と捉える。自身は、東海大相模で夏の甲子園優勝。東海大から日本生命に進み、都市対抗優勝。監督としても日本一に導き、96年アトランタ五輪の日本代表コーチも務めた。

アマ球界で地位を築いたが、母校の不祥事を知り「ショックでした」。安藤前監督が引責辞任し、昨年12月28日にオファーを受けた。「迷いました。大学の指導者とは、勝つだけでいいのか? それだけなら、引き受けていません」。夫人に相談したら、反対されなかった。「スイッチが入りました」。翌日に受諾の意志を伝えた。和歌山から上京し、単身赴任となる。

もちろん、勝つことを追い求める。ミーティングでは、目標に「日本一」を掲げた。ただ「勝つことよりも大事なこと」として、「目的は、成長の土台を作ること」とした。人間的な成長を第一とする。

あいさつや整理整頓を、しっかりするよう求めた。「きれいにしていると、汚いところが気になる。でも、汚くなっていくと、だんだん、そのままで良くなっていく」からだ。前代未聞の不祥事。「選手には、ずっと『あの野球部』と言われるぞ、と伝えました」。だからこそ、これからの態度が大事だと強調した。

門馬大主将(3年=東海大相模)は「以前より厳しい目で見られる。それを受け止めて、変わった姿を行動ひとつから見せていきたい。勝つことはもちろんですが、そこが人として大事」と口元を引き締めた。【古川真弥】