無観客がもったいない! 阪神ドラフト1位佐藤輝明内野手(22)が、プロ野球史上71年ぶりの快挙を遂げた。プロ初の4番で、5回に広島野村から8号逆転満塁本塁打を放った。新人の4番が満塁弾は1950年以来で、4番初試合では史上初めて。開幕から全試合4番の大山を休養させ、矢野監督が「体験入部」と表現した「4番三塁」の起用に自己最多の5打点で応えた。代役の活躍でチームは3連勝。今季最多タイの貯金12とした。

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4番佐藤輝が左足で耐え、右足を沈み込ませ、最後は右手だけで大きなフォロースルーを描いた。5回無死満塁。野村の129キロチェンジアップに体を少し前に出されながら踏ん張った。曇り空に虹のようなアーチが右翼ポール際へ伸びた。4試合ぶりの8号は、プロ初の満塁弾。2点差をひっくりかえした。

「自分ができることはいつも通りのスイングをするということ。4番はチャンスで回ってくることが多いので、最高の結果を出すことができて良かった」

お決まりの「Zポーズ」を決めてベンチへ下がると、突然雨が降った。6回の守備に就く頃にはやみ、その後晴れ間も出現。天からも祝福の? ウオーターシャワーが聖地に注がれた。

新人が初めて4番に入った試合で満塁弾を放つのは史上初。阪神の生え抜き左打者では掛布以来の「4番三塁」で出場し、三塁線の打球を好捕してノーバウンドで一塁送球を見せるなど、3度の守備機会も無難にこなした。「大学時代もサードをやっていたので、違和感なく守ることはできた」。大山の休養日で得た機会をこれ以上ない形で生かした。

天性のマイペースさが重圧をはねのける。近大2年時の成人式は、友人が車で自宅に迎えに来てもパジャマ姿で寝ていた。拍子抜けする周囲をよそに、本人はあっけらかん。この日の試合前ノックではミスをしても笑い飛ばすほど、心の余裕があった。大役にも自分を見失わない強さを持つ。

22歳を起用した理由について、矢野監督は「4番は体験入部のような、体験させてみようかなと。ファンの記憶に残るものを持っている」と説明した。「タイムリーを打ってくれたらと思うところでホームランっていうのは、テルの魅力」。思い切ったタクトで3連勝を呼び、貯金は12まで増えた。

佐藤輝は6回の満塁機でも左前打を放ち、プロ最多の5打点。「1本で終わるより2本」と本塁打後も貪欲さを失わず、これで24打点。リーグ最多の巨人岡本和に1差まで迫った。「やっぱりチームの顔なので。信頼されている選手が4番だと思います。自分もしっかり与えられたところで頑張って、信頼される選手になっていきたいです」。5打席以上の経験値を得て、怪物ルーキーがどんどん強くなっていく。【中野椋】