ロッテ荻野貴司外野手(35)が3連敗を阻止する、価値ある1発を放った。

8回裏の守備を終え、ベンチへ戻りながら考えた。「真っすぐが来たら、甘いのが来たら、いこうかなという風には思っていました」。同点の9回、楽天のマウンドには守護神松井が上がってきた。

過去の対戦成績は12打数1安打。今季も松井はいまだ無失点。決して分は良くない。初球の直球に絞り、予想通りの145キロに体を回した。左翼席へ飛び込む1号ソロ。「本塁打は考えてなかったので、本当によかったと思います」。細マッチョの秘めたるパワーを示し、軽やかにホームまで駆け抜けた。

過去の1安打も本塁打だった。15年5月16日。その時も、松井の15年初失点の1発だった。バットを短めに持ち、丹念に出塁を続けながらも、時には大仕事も。「いい時もあれば悪い時もあるので。今日はたまたま最後に出たのでよかったですけど、日によって変わるので、大きな波がないように微調整をしっかりやりたいなと思います」と職人肌を見せる。

延長戦のない今季、パ・リーグでは何かと9回に試合が動いている。ここまで失敗があったのはロッテの守護神益田だけでなく、不調や登録抹消で、どの球団も勝利直前の万全さに一抹の不安が残る。唯一ここまで無失点だった首位楽天のクローザーをひと振りで崩した。そんな意味でも価値ある決勝弾だ。

左腕からの直球は力強く、スライダーやフォークも攻略は至難だ。ロッテも昨季は対松井のチーム打率が1割1分5厘。井口監督も「ああいう形じゃないと、なかなか連打が難しい投手ですので」と勝負に出た荻野をたたえた。次の試合まで4日間空く。勝利でひと息つけたのは大きい。【金子真仁】