指揮官の愛ある無言のメッセージに、巨人丸佳浩外野手(32)が結果で応えた。

1-2の6回に同点の2号ソロを放ち、今季5度目の逆転勝ちを呼び起こした。新型コロナウイルス感染からの復帰後は本調子にまでは戻らず、1日の中日戦(東京ドーム)で復調を願う原辰徳監督(62)から2打席で交代を命じられた。「愛のムチ」に値千金の一発でかえした。

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満面の笑みで左拳をつきだした丸が、両手で「マル」ポーズを作った。6回2死。森下の真ん中に入ってきたカーブを、体勢を崩されることなく、美しいスイングで捉えた。打球は右中間の最深部へ。同点の2号ソロを決めて本塁を踏むと、ベンチ最前列の指揮官を見た。「あのままダラダラいくとしんどい展開になってしまうと思ってたのでよかった」とほおを緩めた。

新型コロナに感染後、4月4日から10日間の入院生活を送った。退院後は2軍で調整し、同23日から1軍に合流。復帰後は5試合連続安打を放っていた。

指揮官には、本来の姿には遠く映っていた。前日に4打数無安打2三振で迎えた1日の中日戦では、2打席2三振を見て3回でベンチに下げた。空振りに、離脱の影響の大きさを感じ取った。「丸の打撃じゃないんだから。あれだけ選球眼が良かった人だからね」。こんなもんじゃないだろう、頑張ってはい上がってこい-。18年オフにはFAの初交渉の場に初めて同席してまで思いを伝え、巨人入りへ導いた。2打席での交代は信頼する背番号8への無言のメッセージだった。

丸も心を折らず、もがいた。「(2打席で交代は)しょうがないかなという感じがありました。結果が全ての世界なので。真摯(しんし)に受け止めながら現状できることをしっかりやっていくだけ」とかみしめた。「打った、打たない関係なく、こういうことをやってみようという風に考えながらやっている」。この日の試合前練習では石井野手総合コーチと何度も意見交換しながら試行錯誤を繰り返した。ぶれずに打撃と向き合ってきた成果が初の3連敗阻止につながった。

原監督も「非常に勝負強さが出てきましたね。(原監督のコメントが掲載された)皆さんの記事で少々ファイティングスピリットに火が付いたのか」と笑顔で合格点をつけ、続けた。「どういう状況でも栄養にするということを、アスリートは心掛けておくということでしょうね。そこがやっぱり強さですね」。背番号8の先輩でもある指揮官の思いを受け止め、強い丸が戻ってきた。【浜本卓也】

 

▽巨人鍵谷(6回2死一、三塁から登板し、1回1/3を無失点で今季初勝利)「畠が頑張って投げていたので何とかしのぎたいと思って投げました。粘ってみんなで勝てたので良かった」

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