もう1人のルーキーにも、メモリアルアーチが飛び出した。阪神ドラフト6位の中野拓夢内野手(24)が1点リードの8回に1号2ランを放ち、ヤクルトの反撃ムードを断ち切った。ドラフト1位佐藤輝明内野手(22)も最終回に9号ソロを放ち、阪神では実に49年ぶりとなる新人アベック本塁打で4連勝。今季のデーゲームは12戦全勝で、ヤクルト戦は開幕から6連勝となった。

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右翼席に打球が飛び込んだことを確認すると、かみしめるようにガッツポーズを繰り出した。中野がプロ入り後初めてダイヤモンドをゆっくりと1周した。

「打席に入る前から速い球とは聞いていたので、何とかその真っすぐを仕留めることに集中して打席に入りました。感触的には非常に良かったと思っていたので、後は入ってくれと願いを込めてボールを見ていて、入ったので良かった」。

待望のプロ1号は貴重な1発となった。1点リードの8回1死二塁。カウント2-1からヤクルトの左腕坂本が投じた内角高めへの144キロ真っすぐに力負けしなかった。

身長171センチと小柄だが、打撃は力強い。内角高めのストレートを引っ張っての一撃に、二塁走者として打球を見届けた佐藤輝は「あの高めの強い球をよく引っ張ったなと思います」と驚いた。矢野監督も「見逃せばボールだと思うんだけど、左ピッチャーのあの高めのところをしっかり打っていけるのは中野の魅力」とたたえた。

強打の秘密は天性のリストにあった。社会人時代に所属した三菱自動車岡崎の野波尚伸監督(49)が明かす。「手首と足首が強いんです。手首が強いので高めを打つ。小さいのに高めも折りたたんで打てる。低めは伸ばしたら手首が強いので、ひっかけてもハイスピンがかかりますよね」と身体能力の高さを力説する。ドラフト6位で入団した当初は守備が高く評価されたが、この日は本塁打以外にも6回に左前打、9回には遊撃への内野安打で自身2度目の猛打賞。打率も3割6分2厘でバットでもアピールを続ける。

東北福祉大4年時に大学選手権で優勝。プロ初安打、初本塁打も神宮と中野にとっては思い出の地だ。「両親に贈りたいと思います」。記念球を手に初々しく語った。最終回には佐藤輝も9号ソロで続き、球団の新人アベック本塁打は、72年5月30日大洋戦の望月と中村勝以来、49年ぶりだ。「(佐藤輝は)刺激を受けていますが、タイプが違うので、自分のスタイルをしっかりと貫こうという信念が自分にはある。輝の影響は自分の中でも大きいかなと思う」。これで今季のデーゲームは12戦全勝。ヤクルト戦も51年ぶりとなる開幕から6戦6勝となった。4連勝で貯金も今季最多13。輝だけじゃない。2人のルーキーが首位快走の原動力になっている。【林亮佑】

 

◆1972年の望月&中村勝アベック本塁打 2点を追う阪神は5回、先頭の望月充が大洋先発の平松政次から右翼へ7号ソロを放ち、反撃態勢に移った。その裏に阪神先発の上田二朗が松原誠、江藤慎一から連続アーチを浴び点差が広がった。阪神は、7回に代打に立った中村勝広が平松に2号ソロを浴びせ食い下がる。8回に田淵幸一の同点2ラン、さらに敵失に乗じ一挙4点を挙げ逆転に成功した。このリードを江夏豊が守り、阪神が快勝した。

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