DeNAの初代主将で、昨季限りで現役を引退した石川雄洋氏(34)が、アメリカンフットボール選手に転向することが10日、明らかになった。

この日までに社会人トップリーグ、Xリーグのノジマ相模原ライズ入りすることで合意。高い運動能力と長身、俊足を生かし、ワイドレシーバー(WR)として再出発する。DeNAの引退セレモニーは20日中日戦(横浜)の試合前に行われる。

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野球選手としての区切りはつけても、石川氏のアスリートとしての情熱は衰えていなかった。「まだ体は十分に動くし、ぜひチャレンジしてみたい。人生1回きり。やらないで後悔したくないと思いました」。DeNAのスポンサーでもある家電量販店「ノジマ」が親会社の相模原ライズと折衝。「神奈川県のスポーツを盛り上げていきたい」との共通の思いも重なり、石川氏の熱意が受け入れられた。

幼い頃から野球ひと筋だった一方、以前からアメフトに魅力を感じていた。横浜高時代、友人の誘いで同校アメフト部の試合を観戦。組織的かつダイナミックなプレーに心を動かされた。プロ入り後、自主トレで訪れた米国ではNFLのプレーオフを観戦。同じ施設でトレーニングをするアメフト選手のストイックな姿に刺激された。その後も時間が許す限り、NFLの試合をテレビ観戦するようになった。今年3月の引退決断直前までトレーニングを続けていたこともあり、体調は万全。今後を考えた際、「必然的で直感的に思いました」と転向を決意した。

すでにWRとしての練習も開始した。すべてのプレーがサインで細分化され、秒単位で複雑かつ正確な動きを要求されるのがWR。運動能力が高い石川氏といえども、ゼロからのスタートとなる。「まったく知らない世界ですが、新しいことをやるのでワクワクしています。オールドルーキーの気持ちです」。Xリーグではプロ契約がなく、収入はスポンサーを探すなど、個人の裁量次第。それでも、石川氏に迷いはない。

「やるからにはレギュラーを取りに行きますし、必要とされて使ってもらえる選手になりたい。底辺からはい上がって行くわけですから、伸びしろしかないと思ってます」。プロ野球からアメフトへ、前例のない挑戦。スピードスターと言われたハマの主将が、新たなフィールドで再び走り始める。

 

◆石川雄洋(いしかわ・たけひろ)1986年(昭61)7月10日、静岡県生まれ。清水南中から横浜に進学。横浜時代は涌井(現楽天)と同学年。甲子園では2年春準優勝、3年夏8強。04年ドラフト6巡目で横浜入団。主に内野手でプレーし、今年3月21日に引退会見を開いた。183センチ、78キロ。右投げ左打ち。

 

◆ノジマ相模原ライズ 2009年(平21)、解散したオンワードオークスの所属メンバーが中心となり「相模原ライズ」として結成。09年にX3、10年にX2を全勝し、10年12月の入れ替え戦を制し、チーム創設から最短で1部に昇格。11年4月にはノジマとネーミングライツ契約を結び、チーム名を現在のものに変更した。12年8月には、相模原市初のホームタウンチームとして認定。チームカラーはネイビー、オレンジ。

 

◆日本社会人Xリーグ 4月26日の緊急事態宣言発令により5、6月に予定されていた春季公式戦全試合の開催を取りやめた。今後の上位リーグ「X1Super(スーパー)」の開幕は未発表。昨季は新型コロナウイルスの影響で、同リーグ開幕は10月24日だった。例年の8月下旬から2カ月遅れで開幕し、期間も短縮。8チームをA、Bの2ブロックに分けてリーグ戦を行い、各1位のチームが日本社会人選手権「ジャパンエックスボウル」で対戦した。オービックが富士通の5連覇を阻止して、7年ぶりに王座を奪回。9度目の優勝で最多優勝記録を更新した。

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