関学大(関西学生)が国際武道大(千葉県)戦の8回に5点を奪って逆転勝ちし、準優勝した1959年以来、62年ぶりの大会2勝を挙げた。和歌山大(近畿学生)は慶大(東京6大学)と中盤まで接戦も惜敗。大商大(関西6大学)は福井工大(北陸)戦で3安打で1点しか奪えず、完敗した。関学大は今日10日、準々決勝の慶大戦と対戦、64年以来、57年ぶりの4強入りを目指す。

   ◇   ◇   ◇   

敗色濃厚の窮地で、関学ナインが燃えた。火がついたのは3点を追う8回1死一塁。石井雄也内野手(2年=大阪桐蔭)が左腕の速球を強振し、左翼席へ。2ランで1点差に迫ると一気にヒートアップ。叫び声が飛んだ。「まだ負けてる。勝ってない!」。さらにたたみかけ、押し出し四球、暴投、適時打でこの回5点を奪い、豪快に逆転した。

逆境でも屈せず、62年ぶりの大会2勝。本荘雅章監督(50)は「苦しい戦い。ベンチが何をしても流れを変えられないような状況。石井が一発、打ってくれた」とたたえた。春季リーグMVPで今秋ドラフト候補の黒原拓未投手(4年=智弁和歌山)を温存した。「投げたかったのか、ブルペンに行ってました。今日の黒原より(3番手で投げた)鈴木の方がいい。代えるつもりはなかった」と指揮官。エース頼みのチームが一丸で必死に攻防した。

負けられない理由があった。リーグ優勝直後のオンラインミーティング。主将の杉園大樹外野手(4年=明豊)が口を開いた。「みんなが『我慢』してくれたおかげで優勝できた。ありがとう」。実はコロナ禍で公式戦メンバー以外の約200人が4月半ばから練習自粛中だ。杉園は控え選手の声を聞いていた。「野球したいっす…」。仲間は耐えている。すごすごと関西に帰れるはずがなかった。

アーチを放った石井は言う。「データ班が『サイドスローで速球をすくい上げればチャンスがある』と。振り上げてチームの流れを変えようと」。データ収集は自粛中の部員も参戦。分析的中の一撃だった。258人の部員全員で貴重な白星をつかんだ。【酒井俊作】