復調弾だ。広島鈴木誠也外野手(26)が阪神西勇から2戦連発となる12号先制ソロを放った。豪快な“場外弾”で天敵攻略の突破口を開くと、打者一巡した2打席目は3点適時二塁打でとどめを刺した。最近6試合で4本塁打と量産態勢。コロナ感染やワクチン接種による副反応などを乗り越え、侍の4番候補が状態を上げてきた。

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内角低めの難しい球に、体が反応した。2回だ。鈴木誠は膝下低めに落ちながら曲がるシュートを捉えた。すくい上げるようなスイングから高々と舞い上がった打球は伸び、左翼後方の防球ネットを直撃。“場外弾”が広島打線を勢いづけた。天敵西勇に襲い掛かり、打者一巡。2死満塁で再び回ってきた打席では高めをガツン。左中間へ走者一掃の二塁打でとどめを刺した。

「たまたまです」。2試合連発にも、試合後はそう繰り返した。まだ本来の感覚は戻っていない。新型コロナ感染からワクチン接種による副反応などの影響はまだ残る。「本当にちょっとずつ戻していくしかない。1分、1秒も無駄にできない。それくらい今は気を張りながらやらないとすぐに落ちたりする」。現状の最善の形を模索する日々は続く。

大きな変化がなじむまで、時間がかかる。コンタクト生活は2年目となった。視力に自信を持っていた昨季開幕前に、正確な度数を測ると利き目の左目が0・6だった。振り返ると自覚症状はあった。「ぼやけていたので、目を凝らすあまり片頭痛が出ることがよくあった。ぼやけていたので、特にナイターでは見えづらかった」。自身初のタイトル首位打者はそんな状態で獲得した。

今は現状の最善を探り筋力回復を重視する。全体練習後自主的に行っていたダッシュのメニューを減らすなど工夫が見られる。「ヒットばかりポンポン打っていれば良いでしょ、というのは違う。自分が求めているのも、そんなんじゃない。ちゃんとした筋力が整っていないと、技術も上がってこない」。最近6試合で4本塁打。量産態勢が復調の兆しといえる。前日に自力優勝が消滅したチームを浮上させられるのは、主砲しかいない。開幕まで1カ月を切った東京五輪にも、期待は膨らむ。苦しんだ今季、ようやく視界が開けてきた。【前原淳】

▼鈴木誠が2回に2試合連続となる12号。マツダスタジアムでは今季4本目で、通算76本。同球場での最多本塁打は丸(巨人)の76本で、最多記録に並んだ。