21年に特別表彰で殿堂入りしたノンフィクション作家・佐山和夫氏(84)の表彰式が17日、全国高校野球選手権大会の甲子園球場で行われ、野球殿堂ホールに掲額されるレリーフのレプリカと花束が贈呈された。

「わたし自身が大変驚いています。わたしの球歴は(出身の)旧制和歌山中(現桐蔭高)のボールボーイで止まっているんです。野球殿堂入りすることなどあり得ないと思っていますが幸運な道筋に感謝の気持ちしかありません」

野球との出合いは、父が務めた旧制和歌山中のグラウンドでボール拾いに取り組んだのがきっかけだった。終戦後は進駐してきた米軍によって野球に接していく。

野球史家としてニグロリーグ伝説の投手サチェル・ペイジを描いた「史上最高の投手はだれか」、第4回ミズノスポーツライター賞を受賞した「野球とクジラ」など多数の著書がある。

また、1997年発足の高野連の諮問機関「21世紀の高校野球を考える会」の委員を務めた。99年には顧問、01年に「21世紀枠」の創設にかかわるなど、高校野球の改革に尽力してきた。

日米野球史を掘り起こしてきた佐山氏は、今後も執筆活動を続けることを明かし、野球のとりこになった原点というボールボーイからスタートについて「人生というものの面白さを描ければいい」という。

佐山さんは2年ぶりの開催になった春夏の高校野球についても持論を展開した。「もちろん(コロナ禍が)ないほうがいいが、我々は試されているという考え方もできる。戦争の時代は野球なんかできませんでした。でも今は雨がやんだら野球ができます。見えざる敵に知恵を結集しながら乗り越えたい。そして次の機会に備えることが大事です。またそのときは必ずやってきます」と球児たちにエールを送った。