逆転Vへ、大きな1本が飛び出した。阪神佐藤輝明内野手(22)が2点リードの初回2死一、二塁で60打席ぶりの安打となる右前タイムリーを放った。

NPB野手ワーストの連続打席無安打は「59」でストップ。苦悩のルーキーは約1カ月半に及ぶ長いトンネルを脱出し、チームもDeNAに快勝。4連勝で3年連続シーズン勝ち越しも決定。首位ヤクルトを逃がさない。

   ◇   ◇   ◇

みんな笑っていた。佐藤輝の頬も思わず緩んだ。8月21日中日戦以来、45日60打席ぶりの「Hランプ」がともると右手を突き上げ、何度もうなずいた。三塁側ベンチでは首脳陣が、ナインが笑顔、笑顔だ。

「みんな待ってくれていたんで、やっと出せてよかったです」

2点リードの1回2死一、二塁。カウント2-2で左腕坂本の133キロカットボールに腕を伸ばした。右手1本のフォロースルーで一、二塁間を破る。3点目を呼ぶ右前適時打に「必死だった」。直後の2死一、三塁では二盗を仕掛け、三塁走者の生還をアシスト。ハツラツと打って走った。

「いろいろ(状態の)維持だったり…プロ野球は難しいなとすごく思いましたね」

苦しんだ期間について聞かれ、思わず本音がもれた。NPB野手ワーストの59打席連続無安打。夏場には体重が1、2キロ減ったという。それでも「いい感じに絞れた」とプラスに捉えた。デーゲーム続きの2軍暮らしでは、慣れない早起きに「最初はキツかった…」と笑い飛ばす。

1軍再昇格後も早出特打、遊撃での特守など体をいじめ抜き、小麦色の肌が光る。前だけを向いて復活ロードを歩んできたから、胸を張って誓うことができる。「この経験を糧にして、またレベルアップしていけるように頑張っていきたい。本当にチームの優勝に直結するような数字を残していきたいと思います」。

ルーキーの復活打もあり、DeNAに8年連続の勝ち越しを決め、4連勝でビジター9番勝負の初戦を取った。矢野監督も「苦しい思いをしていたと思うし、ホント、うれしい顔をしていた。アイツも1本でいいとは思ってないだろうし、前半戦のような感じをつかんでくれたらなと思って使っている」と逆襲を期待。1本で満足する男ではない。逆転Vへ、長いトンネルを脱出した男が、ついに目覚めた。【中野椋】