ファームと甲子園大会を重点的に取材してきた日刊スポーツ評論家の田村藤夫氏(61)が、各球団の補強ポイントを加味しながら12球団のドラフト指名戦略をチェックした。新人選手の実力はシーズンを通してのみ評価が可能となる。今回のチェックは新人選手の力量ではなく、あくまでも補強ポイントに沿った新人選手指名になっていたか、という視点から行った。


ヤクルト○石川後継の山下輝指名はいいタイミング

1位隅田は抽選で外したが山下輝で確実に即戦力左腕を確保できた。投手スタッフは2年目奥川がシーズン終盤にかけて大きく飛躍したことで一気に充実してきた。先を考えると石川の年齢を考慮すれば、同じ左腕の山下輝指名はいいタイミングと言える。2位で俊足巧打の丸山を指名できた。これも好材料。

ヤクルトのドラフト指名一覧
ヤクルトのドラフト指名一覧

阪神○森木の潜在能力は魅力的

小園を抽選で外したものの、森木を指名して交渉権を獲得。将来有望な高校生投手という補強ポイントは貫いた。現段階では完成度は小園がやや上回るが、球威という才能の面では森木の秘めた潜在能力は非常に魅力的だ。2位、3位で連続して大学生左腕を獲得でき、阪神の投手陣の層の厚さに期待だ。

阪神のドラフト指名一覧
阪神のドラフト指名一覧

巨人○確実に即戦力投手を獲得

隅田を抽選で外すと、そこまで大きく注目されて来なかった翁田に一気にシフトチェンジして単独指名で交渉権を獲得した。外れ1位での抽選を避け、確実に即戦力投手を獲得した戦略と映った。くじ運に恵まれない中で、最悪を想定した中で対応した。原監督の母校から左腕石田の4位指名も印象的。

巨人のドラフト指名一覧
巨人のドラフト指名一覧

広島△逸材黒原は大きいが…やれる範囲の指名で補強

1位の隅田、外れ1位の山下を、いずれも抽選で外した。ただし、大学生でも逸材の左腕黒原を取れたのは大きい。広島は一昨年森下、昨年栗林と新人選手が2年続けて活躍している。抽選を続けて外した印象は残るが、その後は続けて社会人を指名。やれる範囲での指名で補強したといえる。

広島のドラフト指名一覧
広島のドラフト指名一覧

中日○強打の外野は大きな戦力

ズバリ強打の外野手を指名することができた。チームは投手スタッフはそろっており、補強は打線強化だった。それだけにブライトはパンチ力ある打撃が魅力で足もあり、中日外野陣にとって大きな戦力となる。得点力不足が顕著なチームにとってブライト、鵜飼の加入は起爆剤となる可能性を秘めている。

中日のドラフト指名一覧
中日のドラフト指名一覧

DeNA◎ホープ小園加入で巻き返しを

今ドラフトの目玉小園を獲得したのは大きなプラス。チームは相変わらず投手スタッフはいるが故障者が多く、そうした悪循環から、ホープ小園の加入で巻き返しを図りたい。2位では6大学で力をつけた徳山を指名できた。チームの補強は投手力整備が明白なだけに、着実に優秀な素材を確保できた。

DeNAのドラフト指名一覧
DeNAのドラフト指名一覧

オリックス◎手堅い戦略だった

椋木は先発も抑えも両面で可能性を秘める。チームの先発スタッフは充実してきたが、リリーフ陣にはまだ物足りなさがある。そういう点では椋木の加入は投手スタッフにとっては大きい。2位指名で野口を取れたことも内野手の層を厚くするという面では良かったと感じる。手堅い指名戦略だった。

オリックスのドラフト指名一覧
オリックスのドラフト指名一覧

ロッテ○高校生捕手の1位指名に驚きも若返りの流れに合致

捕手が補強ポイントになるとみていたが、1位で高校生捕手の松川単独指名は驚いた。それだけ将来を見据えて守備、打撃で活躍できる捕手を育成するという方針が感じられた。チームは若返りの途中にあり、松川の加入もそうした流れに合致している。3位の広畑指名は、驚きもあるが大きかった。

ロッテのドラフト指名一覧
ロッテのドラフト指名一覧

楽天○強打の右打者は貴重な素材

補強は投手からと感じていたが、高校生野手の吉野を単独1位指名は予想外だった。ロッテ松川と並び、今年のドラフト1位指名でのハイライトと言える。強打の右打者はどの球団にとっても貴重な素材。さらにここ数日で水面下で評価が上がっていた捕手安田の2位指名も独自色が出ていた。

楽天のドラフト指名一覧
楽天のドラフト指名一覧

ソフトバンク◎公表成功での風間単独指名など選手層厚くなる

風間の1位指名を公表しており、他の球団はくじ引きを避けたことで単独指名にこぎつけた。公表から抽選で勝ち抜いた西武とは対照的な形で、球団としてはいい形での1位指名となった。さらに正木や木村ら高校、大学の逸材を迷わず、決断して指名した印象を受けた。また選手層が厚くなる。

ソフトバンクのドラフト指名一覧
ソフトバンクのドラフト指名一覧

西武◎隅田1位など大学有望株次々指名「さすが」

12球団で最も早く隅田の1位指名を公言し、他球団をけん制しつつ、それでも1位指名の意思を示した戦略が功を奏した。さらに佐藤、古賀と、大学生の有望株を次々と指名したのは、ドラフト巧者として「さすが」と思わせる戦略と感じた。左投手が足りないチーム事情からも満点に近い指名。

西武のドラフト指名一覧
西武のドラフト指名一覧

日本ハム○有望な高校生を投打で獲得

重複をさけつつ、将来有望な高校生右腕を獲得したということだろう。達は高校BIG3にひけをとらない能力を秘めている。ストレートの力が強く、さらに上積みが望める大型右腕だ。また強打の有薗を2位で獲得できたのも大きい。チームは中田翔が抜けたが、有望な高校生を投打で獲得したのが象徴的。

日本ハムのドラフト指名一覧
日本ハムのドラフト指名一覧