広島は14日、今村猛投手(30)、中村恭平投手(32)、鈴木寛人投手(20)、行木俊投手(20)の4人と、畝章真投手(26)、佐々木健投手(22)の育成2人の計6投手に来季の契約を更新しないと通告したと発表した。今村は緒方監督時代にセットアッパーや抑えでリーグ3連覇に大きく貢献。カープ最強時代を支えた功労者が、赤いユニホームを脱ぐこととなった。

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駆け抜けた12年を振り返り、今村はうっすら目に涙を浮かべた。「いつかは来ますからね。覚悟はしていましたけど、いざとなると、ちょっとしんどいですね」。マウンド上ではあまり見せなかった笑顔を懸命につくった。

入団1年目から2試合先発で投げ、当たり前のように毎年1軍で投げ続けた。同学年が大学生活を送る4年間で、すでにプロの世界で172試合登板。13年にはWBC日本代表に選出された。一時調子を落とした時期もあったが、18年まで3年間で182試合に登板し、9勝11敗、26セーブ、52ホールドで3連覇に大きく貢献した。プロ12年目で初の1軍登板なしとなった今年、戦力外通告を受けた。

前年6試合登板に終わり、4月に30歳を迎えた今季は悲壮な覚悟を持って臨んだ。「変われるというところを見せたかった」と体重を12キロ絞り込んだ。優勝争いやCS争いの緊迫した試合終盤を務めてきたプライドと自信があった。「隙があればと思って2軍ではやっていました。栗林くんがすごくいいので、抑えはさすがにちょっと無理だなという気持ちはありましたけど、7、8回に食い込めるんじゃないかなという気持ちは正直ありました」。2軍では開幕から8試合無失点投球を続けるなど奮闘したが、最後まで1軍に呼ばれることはなかった。

広島は今季、勝ちパターンを固定できず、中継ぎ防御率はリーグ4位。実績ある右腕が割って入る余地がなかったわけではない。そんなチーム状況下でも、プロ入り初の1軍登板なしという結果が構想外という事実を浮き彫りにした。鈴木球団本部長は「故障があるわけではなし、チャンスがあればチャレンジしたらと思う」と説明した。

球団の思いとは別に、以前から広島愛を口にしていた。「今年1年が最後だと思ってやってきた。まだやれるかなという気持ちもありますけど、まだやれるからやるというのも最近違うなと。今年1年ダメだったら、自分から(退団を)言いに行こうかなという気持ちでやっていた」。今後のことは「未定」とだけ言い口を閉ざした。広島を頂点に押し上げた功労者の1人が、静かに赤いユニホームを脱ぐ。【前原淳】

◆今村猛(いまむら・たける)1991年(平3)4月17日、長崎・小佐々町(現佐世保市)生まれ。清峰では1年夏からベンチ入りし、09年センバツ優勝。同年ドラフト1位で広島入団。リーグ3連覇時は勝利の方程式の一角を担った。通算431試合で21勝30敗、球団歴代最多の115ホールド、36セーブ。183センチ、94キロ。右投げ右打ち。