さあ神戸で逆転日本一だ! 崖っぷちのオリックスが執念の1勝を挙げた。「SMBC日本シリーズ2021」の第5戦で、9回に代打アダム・ジョーンズ外野手(36)が決勝ソロを放った。対戦成績を2勝3敗とし、27日の第6戦はほっともっと神戸で開催。96年日本一の舞台で、ミラクルを起こす。

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窮地を救ったのは大物助っ人だった。ジョーンズが、高らかに雄たけびを上げた。同点で迎えた9回に代打で守護神マクガフから決勝アーチをかけた。負ければ今季終戦の崖っぷち。神戸での逆転日本一へ望みをつなぐ1発だ。

「今日の試合は本当にギリギリだった。このチームは最後まで諦めない」

ベンチ前で歓喜ハイタッチを繰り返し、感情を爆発させた。突き上げた左拳の先には、三塁側スタンド最前列に座る、家族3人の姿があった。

「絶対に終わらせたくないという気持ちがあった。自分のようなベテラン選手は…。ひょっとすれば、これが最後の野球生活になるかもしれないという状況。勝って、もう1試合…」

帽子の裏には愛すべき「AAA」を刻む。オーディー(妻)、オーガスト(長男)、アクセル(次男)…。日本シリーズ期間も家族4人で過ごす。来日2年目、コロナ禍もポジティブに生きる。文化の違いがあり「右も左も分からない、新しい挑戦。自動車も全部反対を走っている(笑い)。高速道路は出口のサインしかわからない」。全てを受け入れて、オリックスで輝いた。「妻とも子どもの学校や生活環境の相談を何度もした。それの決断で、今ここにいる。信じられないぐらい素晴らしい経験を日本でしている」。新たな日本語も頻繁に覚える。適応力が、活躍の源だ。

神戸に帰る-。チームの合言葉をかなえた。第6戦、決戦の場をほっともっと神戸に移す。96年に「がんばろうKOBE」で日本一になった栄光の舞台だ。中嶋監督は言う。「追い込まれた状態というのは変わらないんですけど、『神戸に帰る』というのは今回の、みんなの言葉だったので、それはできたのかなと思います」。対戦成績は2勝3敗で、劣勢のままだ。それでも第6戦の先発は、エース山本。逆転日本一へ、潮目が変わった。神戸で奇跡を起こす。【真柴健】

▼ジョーンズが9回に代打で決勝アーチ。日本シリーズで代打でVアーチを打ったのは、01年<4>戦の副島(ヤクルト)以来20年ぶり。最終回に打った選手は92年<1>戦杉浦(ヤクルト=延長12回)00年<1>戦ニエベス(ダイエー)に次いで3人目となった。なお、代打本塁打は今年の<1>戦モヤ以来30人、32度目で、シリーズで2本の代打本塁打が出たチームは70年ロッテ以来51年ぶり2度目。70年ロッテは井石が1人で2本記録しており、2人が代打本塁打を打ったのは今回のオリックスが初めて。

◆ジョーンズのポストシーズン本塁打 大リーグでは、オリオールズ時代の14年ア・リーグ優勝決定戦<2>戦(オリオールパーク)で1本放っている。オ軍の3番センターで出場し、3回に3-3の同点に追いつく2ランを放った。この試合で相手のロイヤルズの2番を打っていたのが青木(現ヤクルト)。試合は6-4でロイヤルズが勝った。