鉄仮面の奥に、揺れ動く感情があった。ドラフト3位ルーキーの赤星優志投手(22)が、今までとは違う朝を迎えた。3日阪神戦でのプロ初勝利から一夜明けた4日。闘病中だった父篤志さんが天国へ旅立った。58歳だった。もの静かな父だった。

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中学卒業時、6人きょうだいの末っ子の赤星は、元気だった両親への手紙で「絶対プロ野球選手になるから。死ぬなよ」と書いた。その後、父の病が分かった。2年前に大手術を受け、闘病を続けていた。父の命が、そう長くないことは分かっていた。プロ入りからキャンプ、オープン戦と猛アピール。開幕ローテをつかんだ。3月27日の中日戦のプロ初登板と、阪神戦でのプロ初勝利を、地元の東京ドームで届けられた。

プロ初登板は、家族とともに車いすで応援に来てくれた。プロ初勝利は自宅のベッドから。テレビでお立ち台に上がる晴れ姿を、涙ながら見届けてくれた。4日前、母笑子さんからのメッセージにこう返した。「(父が)生きているうちに初勝利できて良かった。体には気を付けて長生きしてね」。両親への熱い思いと優しさがあった。

初勝利した前回登板から中6日。父との別れから1週間たたずして、この日のマウンドに上がった。いつものように冷静に、淡々とアウトを重ねた。7回2失点。粘り強く121球を投げ切った。味方の援護なくプロ初黒星を喫し「7回2死からの四球が全てです」と反省が口をついたが、堂々たる投球を届けた。幼少期から両親、家族にずっと応援してもらってきた。どこまででも届くように-。マウンドからの恩返しは、ずっとずっと続く。【小早川宗一郎】