がむしゃらに、豪快に、巨人中田翔内野手(33)が2連勝に貢献した。4回無死一、二塁では、プロ15年目で初めての犠打を決めて得点をお膳立て。1点リードの8回には、勝利を決定付ける3号2ランを放った。開幕前の絶好調から一転して不振に苦しみ、2軍落ちも経験。自身の復活とチームの再進撃へ、なりふり構わずがむしゃらな姿で、チームに上昇気流を吹き込んでいく。]

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全ての閉塞(へいそく)感に向けた。バット1本でムードを一変させる野球の魅力を、中田は9イニングで大いに表現した。

1点リードの8回無死一塁。中日山本の高めに来た148キロの初球を振り抜き、左中間席へ120メートルの大きな弧を描く。3号2ランで勝利を確実にした。

「ヨッシャーーー!」と叫び、ゆっくりと駆けだしたダイヤモンド。見渡せば360度、オレンジ旋風が吹いていた。コロナの影響で禁じられていたタオル回しがこの日、3季ぶりに解禁。また1つ、スポーツ観戦の日常を取り戻すきっかけにもなった。

「勝利につながる1発が打てて良かった」。その心情を対照的なプレーで表現したのが同点の4回だった。無死一、二塁。打点王3度の男に出されたサインは送りバント。3万4852人の観衆がどよめき、中日大野雄が思わずプレートを外した。

1球目はファウルも、131キロの2球目を丁寧に投手前に転がし、プロ通算1521試合目で初の犠打を成功させた。次打者大城の二ゴロの間に三塁走者が生還し、一時は勝ち越しとなる得点につなげた。

球界を代表するスラッガー。チャンスにもバントサインが出る自身の現状に葛藤がなかったとは言えない状況だが「初めてのバントで緊張したが、成功できて良かった」とプロの仕事をした。

打率1割8分8厘、2本塁打と打撃不振に陥り4月22日に再調整で出場選手登録を抹消された。それでも腐らず2軍で結果を残す。雨天ノーゲームとなった試合も含め“10戦6発”。10日の1軍復帰を勝ち取った。

原監督は「チームが勝つことが大前提と日ごろより彼と話をしていた。非常に献身性のある選手。いいバントだった。(本塁打も)非常に価値がある」と褒めちぎった。

「チームの勝利のために全力でプレーするだけ」と中田。苦境にあるチームと自身が重なる。泥臭い犠打後の豪快な1発が、明日につながる懸け橋に見えた。【三須一紀】

▼中田翔が4回、通算6245打席目でプロ初の犠打。初犠打までに6000打席以上要したのは、73年張本勲(日拓)以来2人目。張本は8月30日近鉄戦で通算7669打席目で初犠打を記録しており、中田は史上2番目の遅い犠打だった。なお、6000打席以上で1度も犠打がなかった選手にはローズ(オリックス=7320打席)ラミレス(DeNA=7152打席)田淵(西武=6875打席)がいる。

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