魔の8回だ。広島がヤクルトとの首位攻防戦に敗れ、セ界トップを明け渡した。1点リードの8回、2番手ニック・ターリー投手(32)が村上に同点ソロを浴びるなど、2失点で逆転を許した。チームの今季イニング別失点数は8回が最多の32失点。守護神栗林につなぐ「8回の男」が確立できていない。連勝も4で止まり、巨人もゲーム差なしの3位に肉薄。4年ぶりV奪回へ勝利の方程式確立は急務だ。

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首位キープまであと2イニングだった。左腕ターリーが誇る150キロ超の直球が、軽々とバックスクリーンにまで運ばれた。あまりに衝撃的な1発。ただぼうぜんとマウンドから打球を見送ることしかできなかった。悠々とダイヤモンドを1周する村上を横目に、帽子をかぶり直した。

1点リードの8回。来日4登板目にして初めて、イニング頭から「勝ちパターン」として送り出された。与えられた使命はただ1つ。3つのアウトを奪って守護神栗林に託すことだった。迎えた先頭の村上。1ボールから真ん中寄りの内角球をソロに仕留められた。同点。続く中村の一塁へのゴロもカバーが遅れ、内野安打となった。青木には4球連続ボールで四球を出し、無死一、二塁とし降板。修正を図ろうとしたが、流れにのみ込まれ、1死も取れなかった。

急きょ登板した森浦も流れは止められなかった。犠打と適時打で勝ち越し点を献上。この回2点を失い、逆転を許した。イニング別の失点数は8回がワーストの32失点。佐々岡監督は「8回(の投手)は決められない。流動的にいかないといけないが、まだまだ課題が残っている」と厳しい表情だ。 来日初黒星を喫したターリーはリベンジを誓った。「もし、もう1回あの場面で彼と対戦することがあっても、同じ球を投げて抑えたい。チームをガッカリさせてしまったので、次は勝ちに貢献したい」。助っ人左腕が負けん気の強さをのぞかせた。

連勝は4で止まり、ヤクルトに首位を明け渡した。振り返れば3位巨人も0ゲーム差で迫っている。勝ちパターンなくしてシーズンは勝ち切れない。方程式の確立は急務で、佐々岡監督も孝行息子の登場を願ってやまない。【前山慎治】

○…田中広がNPB史上514人目の1000試合出場を達成した。「8番三塁」で今季7試合目のスタメン。5回に右前打を放ち、メモリアルに花を添えた。「やるべきことを1つずつちゃんとやって、その結果こうなった。若い時から使ってもらえるように結果を出してきた。これらも頑張りたい」。32歳の中堅がさらなる貢献を誓った。

▼通算1000試合出場=田中広(広島) 14日のヤクルト5回戦(マツダスタジアム)に先発出場して達成。プロ野球514人目。初出場は14年3月29日の中日2回戦(ナゴヤドーム)。

○…坂倉の痛烈な3号ソロも空砲に終わった。2-2の6回2死から右中間へ低いライナーの1発。一時は勝ち越しとなるアーチだった。「(本塁打は)積極的にいこうと決めていた。いい1本だった」。3回には今季チーム初となる盗塁阻止も決めた。「自信にして、これからまだ試合が続くので頑張りたい」。捕手と三塁兼任で全39試合に出場中のスラッガーが、さらなる活躍を誓った。

○…先発森下は7回で今季ワーストの10安打を浴びながら2失点(自責1)にまとめた。初回無死満塁を1失点で切り抜け、その後も5回と7回を除く毎回安打を許したが、追加点は村上のソロ1点にとどめた。「(ほとんど)毎回走者を出してリズム的にあまり良くなかった。3人で終わる回をしっかりつくっていけたら」。勝敗はつかなかったが反省しきりだった。

○…アンダーソンが15日ヤクルト戦で先発する。「(ヤクルトの)映像は見た。ラインアップの印象は自分の中に入ってきている。(本拠地は)何度か投げて球場の雰囲気、ファンの熱気、すべてが大好き」。来日初登板した前回5日の巨人戦は7回無失点で初勝利をマーク。勝てば再び首位に返り咲く一戦で、助っ人右腕が快投を誓った。