ありがとう、超人-。阪神糸井嘉男外野手(41)が引退試合に臨み、5回に代打で左前打を放ち、有終の美を飾った。 投手から野手に転向し、プロ生活19年で通算1755安打を積み上げた。「ホンマに感動した」と甲子園のファンに感謝し、超人と呼ばれた男がバットを置いた。

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糸井はあふれる涙をこらえながら、6900回目の打席にゆっくりと歩みを進めた。2点ビハインドの5回先頭。「代打糸井」がコールされると、SMAPの「SHAKE」が鳴り響き、万雷の拍手に包まれた。「ホンマに感動したし、これが最後ってなるとやっぱ寂しい」。涙を拭い、最後の真剣勝負に挑んだ。

「甲子園で最後の打席を迎えられて心の底からよかった。ヒットを打てて本当に幸せです」。2ボールから4球ファウルで粘り、フルカウントからの8球目。広島森下の外角高め147キロを強振。打球は三遊間を破った。通算1755本目のヒットに、甲子園はお祭り騒ぎ。一塁に到達すると、ヘルメットを外し、最後の雄姿を見届けに来た4万2267人に頭を下げた。その後は一塁走者に残り、中野の三ゴロで封殺となったが、300盗塁を刻んだ足でスライディングして締めくくった。

現役終盤は大きな背中で語ってきた。出番が減っても、準備を怠ることはなかった。試合前の全体練習を終え、ナインが食事をとっている最中。1人黙々と室内練習場でマシンと向き合い、バットを振り込むことが当たり前の光景だったという。そんな姿を見てきた坂本は「何歳になっても、試合に出る、出ない関係なく向上心を持ってやられている姿は僕の中で一番勉強になりました」。阪神での最後の6年間で、後輩たちに大きな影響を与えてきた。

約8分間に及んだ引退セレモニーのスピーチでは19年間の思い出を振り返り、最後は声を張って、感謝の思いを言葉に乗せた。

「僕の野球人生は本当に幸せでした。密でした。やり切りました。でも、超人伝説はまだまだ続きます。甲子園ありがとう! タイガースファンありがとう! おやじ、オカンありがとう! 本当に19年間、温かいご声援ありがとうございました!」

マウンド上ではチームメートによる胴上げが行われ、7度宙に舞った。「盛大に門出を祝っていただいて、一生の思い出です」。最後は右翼にグラブ、左打席にバットをそっと置いた。誰からも愛された背番号7の超人が、現役生活に別れを告げた。【古財稜明】

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