12月9日、ついに「現役ドラフト」が行われる。今後の一番のポイントは、どれだけ実を伴うかだ。

各球団で必ず選手の入れ替えが起きる仕組みとなっている。言い換えると、各球団は他球団へ“供出”する選手を用意しなければいけないということ。これまでなら戦力外にしていた選手を、現役ドラフト用に取っておくという事態も考えられる。言葉は悪いが、クビが1年伸びるだけ、12球団で不要な選手を入れ替えるだけ、といったことになる恐れもある。移籍先でもプレー機会がないままなら「出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化させる」という理念は有名無実となってしまう。

12月ではなく、シーズン中に開催する案もあった。20年にプロ野球選手会とNPBとで合意間近までいった時は、7月や8月の開催が議論されていた。選手側からすれば、残りのシーズンで一花咲かせようというモチベーションになっただろう。

ただ、この日の決定を受け、プロ野球選手会の森忠仁事務局長は「時期よりは、どういう選手がリストアップされるかが大事だと思っている」と強調した。さらに「保留者名簿に載った選手ということで、各球団、戦力では考えているところから選手が出てくる。この時期で良かったと思う」と評価した。開催の1週間前(12月2日)に、各球団が翌年の契約締結権利を保留する選手の名簿が公示される。現役ドラフトの対象選手は、その名簿に載った選手なのだから、少なくとも建前上は、不要な選手の入れ替えにはならないとは言える。

制度上も、不要な選手の入れ替えにならないようにする工夫がされている。詳細は未発表だが、用意した選手に対する他球団からの指名希望の総数がもっとも多い球団が、最初に指名できる仕組みだという。つまり、より人気のある選手を用意した球団が有利となる。もっとも、この工夫だけでは万全とならない。仮に人気の出る選手を用意するのが1球団だけなら、そこに希望が殺到。当然、指名順位は1番目となるが、他の11球団には取りたい選手がいない、ということに。新制度は機能しなくなる。

ただ、選手会関係者は「現役ドラフト用に本来戦力外の選手を残しても、貴重な枠を埋めることになる。球団にもリスクはある」と指摘する。用意する選手は「2人以上」と定められている。1人は他球団に移籍させても、もう1人がそのまま残るケースが出てくる。

やはり、球団側が「うちでは出場機会が限られるが、環境を変えれば戦力になり得る」と考える選手を真剣に選ぶことが求められる。また、選手の側も移籍を好機とし、新天地で出場チャンスにつなげたい。移籍先で活躍する選手が出ることで、初めて現役ドラフトは成功したと言える。

いずれにせよ、実際にやってみないと読めない部分は大きい。森事務局長も「やってみないと、どういう選手が出てくるか分からない」と言った。まずはスタートする。それで不備が明らかになれば、選手、球団双方のメリットを見つけるべく、改善点を話し合って欲しい。【NPB担当 古川真弥】