「船釣り、サイコー!」。DeNA大田泰示外野手(32)が、昨年12月に蝦名達夫外野手(25)とともに船釣りに出掛けた。山下橋の「広島屋」から、横浜沖へ出船。釣り歴20年以上の大田は、30センチ超のアジを意味する「尺アジ」に狙いを定めるも、まさかの大苦戦。船釣り初体験の蝦名はセンスの良さを示しながら、思わぬアクシデントに襲われた。ドラマのようなクライマックスとは。【取材・構成=久保賢吾】

午前7時、DeNA大田は大志を抱き、船釣り初体験の蝦名とともに横浜沖へ出船した。今回、大田が目指すのは、30センチオーバーのアジを意味する「尺アジ」。「何とか大きいのを釣って、家族でおいしく食べたいですねぇ」。極寒の中だったが、ハートは熱く、ポイントへ向かった。

開始早々、当たりが来たのは蝦名だった。石井船長の計らいで登場曲「エビカニクス」が流れ、後押しを受ける。指導を受けながら2匹をゲット。6分後に2匹、さらに7分後に1匹、6分後に1匹と計6匹を釣り上げた。大田から「いいね、えびちゃん。これで釣りハマるね」と絶賛され、蝦名は「最高です」とニッコリ笑った。

危機感を募らせたのは、大田だった。釣り歴20年以上の腕前を披露すべく「ワームかルアー(魚の形などをした疑似餌)を駆使して釣りたいです」と意気込んだが、次々と釣り上げる蝦名の快進撃に、さすがに焦りを隠せず。当初は「そんな簡単に釣れませんよ」と穏やかだった表情が「不安になる、不安になる…」と曇り始めた。

えさ釣りで次々と釣り上げる蝦名に対し、大田が目指したルアーとワームは難易度が高く、次第に「釣れなかったら、えびちゃんと同じやつで最後はやります」と保険をかけた。海上に船のエンジン音が響く。異様に静まり返る中、ふと大田が隣に目を移すと船酔いでグッタリとする蝦名の姿が映った。

大田 一瞬で釣って、一瞬でダウンしてるじゃん(笑い)

蝦名 下を向くとやばいです…。

大田 朝飯、食べた?

蝦名 いえ…。

大田 朝飯を食ったら、酔わないよ。

蝦名 そうなんですか? 知らなかったです…。

ボウズの不安に襲われ、大田はしびれを切らしたように垂らしたままの蝦名のさおを手に取って、リールを巻いた。「釣れてるやん! さお貸してっていったとたん、釣れてた」と爆笑した。蝦名のさおで次々と釣り上げたが、サイズは「ちゃいち~(小さい)」。石井船長の助言を受け、自らのさおの仕掛けを少し変え、ラストチャレンジへと向かった。

何度か、当たりはありながら、糸が切れる負の連鎖。大田の後ろで別グループの女性が尺アジを釣り上げ、船内が盛り上がった瞬間だった。「これ、デカイよー!」。この日一番のさおのしなりが大物を予感させた。5分間の激闘の末、釣り上げたのは40センチの「尺アジ」だった。

大田 これですよ、目指してたのは。釣りやってて、良かったぁ~!

「尺アジ」を釣り上げた直後、予定の時間が終了した。船宿に戻った大田は「台本通りのエンディングで良かったです」とニヤリ。「子どもたちも喜びますし、妻と2人でさばいて、いろんなメニューを考えて、作りたいと思います」とイメージしながら、家路についた。その夜、大田家の食卓にはフライ、刺し身などアジ料理が豪華に並んだ。