WBCで右手小指を骨折した西武源田壮亮内野手(30)が、26日のオリックス戦(ベルーナドーム)から1軍に合流する。松井稼頭央監督(47)が「(26日から)合流します」と明言した。本拠地に隣り合う球団施設で過ごした約2カ月間に「潜入」した。

    ◇   ◇   ◇   

3月26日、WBCの日程から西武に戻ってきた源田は、晴れやかな顔で思い出の数々を話した。

それを境に、表舞台から姿を消す。3月10日のWBC1次ラウンド韓国戦で負傷。その後、ケガを押して戦列復帰し、世界一に貢献した。ペナントレースはどうするか-。注目が集まる中、球団の方針で「リハビリ最優先」が決まった。

苦しい日々が続いた。小指以外は元気なのに、できる練習は限られる。何とも言えない空気感。4月29日にようやく声を掛けた。

「今できることを全力で取り組むしかないんで。日にち薬です、骨は。もうちょっとかかるかな…」

その時に小指にあったテーピングが、5月4日には外れていた。誰もいない室内練習場。8メートルほどの距離からスタッフが投げる球を打った。「これから球速が上がると衝撃も大きくなるので」。徐々に段階が上がる。すぐに記事にしていいか尋ねた。「しないほうがいいっす。まだ自分のことは極秘で」。優しい目でお願いされた。私の存在に気付いているはずなのに、投げるスタッフに「手に衝撃、来ないっす!」と声を張ってくれるような人だ。

小指以外は元気、のもどかしさが続く。しかし同13日、室内練習場をのぞくとユニホーム姿の源田がいた。右腕渡辺とのシート打撃。145キロを打つ。話を聞こうとしたら逃げ出すそぶりをした。「めちゃくちゃ前進です」と、笑った。翌14日、母の日にはピンクバットを持ち、日刊スポーツのカメラマンの撮影にスマイルで応じてくれた。源田本来の表情やしぐさが、順調ぶりを伝えてくれる。

時が来た。シーズンがすでに3割を消化した段階での“開幕”になる。24日、最後の2軍戦に臨む源田に声を掛けた。逃げるフリもせず、真顔で正面から向き合ってくれた。「1軍の試合に出て勝ちたいなって、ずっと思ってました。自分らしく頑張ります」。WBC決勝以来、65日ぶりの実戦だ。25日現在、借金6の5位。耐えてきた西武を救う。【金子真仁】