【04年11月4日付・日刊スポーツ】

 近鉄の中村紀洋内野手(31)がポスティングシステムでメジャーに移籍する。3日、大阪市内で会見し、近鉄球団の了承を得たことを明らかにした。02年オフにFAでのメッツ移籍が内定していたが、土壇場で近鉄残留を決意。その際、2年後に米移籍を希望した際には認めてもらえる契約を球団と交わしていた。最終的には愛着のあった古巣の消滅が決断の決め手となった。移籍先は、近鉄の友好球団でもあるドジャースが確実だ。

 近鉄の了承を取り付け、中村が晴れてメジャー挑戦を宣言した。2年前は夢よりも近鉄に残留し恩返しする道を選んだが、愛着のある古巣が統合で消滅したことで、もう、夢をおさえることはできなかった。「やっと、どうするべきか結論が出ました。近鉄を日本一にすることを目標にやってきたが、もうできなくなった。これまで考え抜いて、最後は自分の気持ちに素直になろうと決めました」。

 FA残留した2年前の契約に、2年後(今オフ)に米移籍を希望した際はポスティングシステム行使を認めるとの特記事項があり、実質的な主導権は中村にあった。それでも、決断までは時間を要した。オリックス、近鉄からの強い慰留を受け、家族の生活環境などについても熟考。1カ月悩んだ末に結論を出した。

 この日午後に連絡を受けた近鉄足高代表は「残って欲しいと話はしたが、こちらにも近鉄球団がなくなるということで申し訳ない気持ちがある」と慰留を断念した心中を明かした。2年前の契約に特記事項がある以上、合併新球団側も中村残留を強く要請できなかったようだ。

 まだ移籍市場が整っていない米球界の事情を考慮し、ポスティング申請の時期は流動的なものの、中村はこの日午前、団野村氏と正式に代理人契約を完了、交渉への準備を整えた。「今はとにかく手を挙げる球団があって欲しいという思いだけ。あればどこでも行くつもりだし、なければ日本に残ってどこかでプレーします。オリックス?

 もちろん、その可能性もあります」。

 未入札の不安さえ口にしたが、ドジャースの入札が有力視される。ド軍は近鉄の提携球団で、今春ベロビーチ・キャンプには中村の特別参加も受け入れた。今季は野茂、石井らが所属するなど日本人選手に門戸を開いてきた。現在はFA宣言中のナ・リーグ本塁打王、エイドリアン・ベルトレ三塁手(25)の慰留に努めているが先行きは不透明で、並行して中村どりに動く可能性は極めて高い。

 中村もリスク覚悟だ。近鉄との4年20億円の契約は2年を終えたばかり。メジャーではとてもこの好条件は望めない上、レギュラーを保証される立場でもない。しかし「年齢的にもこれがラストチャンス。自分が評価されてきたのは打撃。持ち味のフルスイングは変えるつもりはない。三塁へのこだわりもあるし、勝負に行って、何とか勝ち取りたい」と迷いはない。野球人生をかけて、メジャーの大舞台で勝負を挑む。【吉富康雄】