これぞ、黒田の「男気」だ。

 8年ぶりに古巣広島へ復帰することが決まった黒田博樹投手(39)は、7年前の14年11月30日、FA宣言して米大リーグに挑戦することを球団に伝えた。

 会見では「ファンの方、球団、チームメート…。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。球団にも『ありがとう』の気持ちを伝えさせていただきました」と目頭を押さえながら話した。

 FA権を取得した06年は権利を行使せずに残留。それでも「年齢的にも先は長くないし、11年間優勝争いもしていない。もう1度野球に対する気持ちを見つめ直し、新鮮な気持ちで挑戦してみたかった」と米挑戦の理由を説明した。

 「広島を優勝させたい気持ちでずっとやってきた。周囲を見返したかった」。チーム愛は変わらないが、今は夢を追うことを決断した。「吹っ切らないといけないですね」。

 一方、広島球団は11年間付けた背番号「15」を「半永久欠番」ともいえる球団預かりとすることを決めた。交渉役を務めた鈴木球団本部長は「彼にとって広島が郷(さと)。いつでも帰ってこれるように15番は空けておく。帰ってきたいならいつでも帰ってこい、と伝えました」と語った。

 黒田は「中途半端な気持ちでは行かないが、ここまで来たのはカープのおかげ。また日本でやるならこのチームだと思う」と感謝した。

 そしてドジャースと正式契約し、12月19日に広島市内のホテルで会見し移籍報告。球団事務所も訪れた。

 松田オーナー、鈴木球団本部長と約30分間の話を終えた黒田は笑顔だった。時差ぼけでやや疲れた顔だったが古巣からのエールに胸を打たれた。「言ってくれたら何でも送ってやる、と言っていただきました」と明かした。

 席上、同本部長が「食べ物でも本でも、ほしいものがあったら言ってこい。お好み焼きのソースでもいいぞ。さすがにカキは送れんけどな」。黒田はすでに両親を亡くしており、親代わりを務めてくれる球団の優しさが身に染みた。早速、球団への恩返しも約束。今年から始めた広島市民球場の「黒田シート」も外野指定席15席のままで継続することを決めた。「やっぱり活躍することが一番の恩返しだと思います」と話した。

 それから7年。黒田は約束を守って広島に戻ることを決めた。球団も7年前と同じ背番号15を再び用意した。日米通算200勝まであと18勝。名球会入りは広島のユニホームを着て目指すことになった。