<練習試合:中日1-10阪神>◇13日◇甲子園

 中日落合博満監督(54)が甲子園の“欠陥ベンチ”を平然と受け流した。13日、阪神との無観客練習試合で初めてリニューアルされた甲子園に足を踏み入れた。前日12日、阪神岡田彰布監督(50)がベンチなどに対して改善要求を出した経緯があるが「何も言うことはない」と対照的な姿勢に終始。試合は15安打を浴び1-10で完敗したが、敵地で余裕を見せつけた。

 試合前、三塁側ベンチに姿を現した落合監督はリニューアルされた甲子園を見渡し、ベンチに腰をかけた。前日10日に岡田監督が「ダメ出し」したばかりの問題のベンチ。だが、その感想を問われると、まったく動じることなく淡々と答えた。

 「何も言うことはないよ。こっちが何か言うことじゃない。こういう球場があって、こういうベンチがある。だったらそこでやるんだよ。落ちたら危ない?

 落ちればいいじゃねえか。ベンチにいるみんなが落ちないように助けるよ」。

 前日に岡田監督が注文をつけたのは後部シートの天井が低いこと、ベンチが深く掘ってあるためファウルボールを追った捕手や内野手が落下する危険性があることなどだが、それについても注文はつけなかった。「例えばナゴヤドームのことなら、どうしようかと考えるけど、こっちはビジターなんだから」。本拠地ナゴヤドームに関しては照明の位置など細部に注文を出しているが、ただ他球団の問題となれば一切口は出さない。落合監督らしい配慮でもあった。

 指揮官と同様に選手たちも動じていなかった。選手会長の荒木は「別に影響ないですよ。内野が近くなっていいんじゃないですか」。三塁と一塁を守った中村紀も「(内野席が)緑になって見やすくなった。(ファウルゾーンがせまくなり)ファウルが多くなるので、お客さんはグラブを持って応援しなあかんかな」とまったく意に介していなかった。

 試合後、帰りのバスへ向かう落合監督に、阪神の球団関係者が声をかけた。「何か問題ありましたか?」。落合監督は平然と答えた。「何もないですよ。あとはそっちでやってください」。ライバル阪神との初対決は自慢の投手陣が打たれて1-10と惨敗したが、その表情には余裕が漂っていた。【鈴木忠平】