<横浜3-6阪神>◇12日◇横浜

 お待たせ!

 阪神金本知憲外野手(40)が横浜5回戦(横浜)の7回、寺原から右前適時打を放ち、プロ野球史上37人目の2000本安打を達成した。6日の巨人戦で王手をかけてから19打席目は歴代の達成者で最も苦しんだ。遅咲きだが、年を重ねるごとに成績を上げ、40歳0カ月での到達は史上3番目の高齢になる。連続試合フルイニング出場の世界記録を更新中の鉄人に、新たな勲章が加わった。

 大歓声に後押しされるように打球は右前に落ちた。難産の末に生まれた2000本安打。金本のバットは折れていたが、鉄人らしいフルスイングで詰まりながらももっていった。「うれしいより、ホッとしたのが率直な気持ち。両親や携わった方々、神様、先祖に感謝したい」。一塁を回ると「フーッ」と息を吐いた。

 6日の巨人戦で王手をかけてから19打席目のヒット。37人の達成者の中で、一番苦しんだ。球団のスタッフすら声を掛けられない日もあった。自分でトンネルから抜け出すしかなかった。

 この日も第3打席まで快音は響かず、7回の第4打席。勝ち越し打の新井を三塁に置き、横浜先発寺原の150キロの速球を強い気持ちで右前へ打ち返した。「ちょっとじらしすぎましたかね?

 すいません。僕は長い感じはしなかったんですが。でも、結果的にいいところで打ててよかった」。記念の1本に終わらせないのがアニキだ。勝利に貢献する価値ある一打だった。左翼の守備位置に向かうと、スタンドから祝福の声が沸き上がった。金本は右手で帽子を取り、やきもきさせたファンへ大きく掲げて感謝した。

 忘れられない一言がある。昨年12月にがんで死去した故島野育夫前総合特命コーチ(享年63)の病床からの電話。「見舞いには来んでもええ。ほかにすることがあるやろ」と言われた。どんな時も全力でプレーする大切さを説いていた大先輩からの激励に黙って従った。昨年10月に左ひざを手術。先の見えないつらいリハビリを乗り越え、開幕からグラウンドに立ち続けたからこそ、この日の記録がある。世界記録の連続試合フルイニング出場も1199試合になった。

 球場関係者が届けてくれたメモリアルボールは、自分のカバンの中に大切にしまい込んだ。「家にでも飾ろうかな。次は2500にチャレンジしようという気持ちになった。そこまで何とか。これからもタイガースのユニホームを着て、1本でも多くのヒットを打ちたいと思います」。40歳になっても、目標は常に高く。ゴールはまだまだ見えない。【福岡吉央】