<日本ハム4-2オリックス>◇22日◇札幌ドーム

 開けていたユニホームの第1ボタンを留めてから、カメラの放列の前、記者会見場へ姿を現した。日本ハムのヒーローは3年目で、プロ初勝利をつかんだ星野八千穂投手(27)だった。JR北海道出身。北海道移転5年目で、地元の高校、大学、企業の出身者では初の白星。「長かったですかね。いつできるのかなぁと思っていた」。思い出の札幌ドームのお立ち台で、感慨に浸った。

 ケジメの年と期していた。今年1月、北海道出身の亜美(つぐみ)夫人(25)と結婚した。大卒で社会人。即戦力と期待されて入団しながら芽が出ず迎えた、勝負の1年だった。社会人時代に覚えたシュートを磨き、日ごろのトレーニング内容も変えた。キャンプから結果を残し続け、初の1軍切符を開幕からつかんだ。変身のきっかけを問われ「練習ですかね」としみじみと振り返った。

 地道に進んできた道は、8試合目のマウンドで白星につながった。打者2人、11球。四球を与えたが、大引から奪った見逃し三振、1つのアウトで1つの目標にゴールした。「いろいろお世話になった。両親、嫁さん…とか、いろいろ」。札幌市内の合宿所から札幌ドームへの通勤は軽自動車、亜美夫人の両親が貸してくれた。選手ではないと疑われ、球場入り口で身分を照会されたことが何度もあった。

 プロ入り前の04年3月。星野は、この札幌ドームのマウンドにいた。日本ハムとの交流試合で、JR北海道の先発を任された。初回の先頭打者、同い年の小谷野への初球を本塁打された。「あの時はプロはすごいな、と思いました」。駅員をしながら追ったプロの夢。1つステップを上がったこの日も、いつものように軽自動車に乗り込んだ。尾崎、宮西を乗せたぎゅうぎゅう詰めの車内。ウイニングボールを手にした運転手は、幸せなドライブへとアクセルを踏み込んだ。【高山通史】