<中日1-9阪神>◇3日◇ナゴヤドーム

 阪神平野は「外野手」でっせ。登録はそうなってます。でも内野もうまいし、ホント、すごい。こんな選手が取れてよかったあ。偵察要員を使った中日戦は「2番二塁」から「2番右翼」にシフトして1号3ラン含む4安打の大活躍。同じく移籍組の新井も先制2ランやし、安藤は好投やし、バルディリスも押し出し死球デビューやし。黄金週間の遠征好発進で首位堅守。言うことなし!

 打球が客席に飛び込むのを見届けると、思わずこぶしを握りしめた。前を走る赤星のガッツポーズが目に飛び込んでくる。沸き上がる虎党の歓声を耳に生還。ベンチではナインがいつもより高く手をあげてハイタッチを待ち受けていた。チーム一の小兵をからかうジョーク交じりの祝福。迷わず背伸びをして喜びを分かち合った。

 平野

 たまたま、気持ちです。つなごうと思っていたけど、強くたたきにいったのが結果的に入ってくれた。でもランナーが安藤さんだったのでよかったです。

 移籍後初アーチは、5年前にプロ入り初本塁打を放った思い出の地・名古屋で飛び出した。4回1死一、二塁。カウント1-3から小笠原の直球が内角に甘く入るのを見逃さなかった。右翼ポール際にライナーで飛び込む3ラン。今季初の1発で、欲しかった初戦の勝利を決定づけた。

 もちろん本来の役割も忘れていない。初回、3回と中前打を放つと、主軸のバットで生還。左投手も苦にしない器用さを存分に発揮すると、6回にも右腕金剛から三たび中前打と大車輪の活躍だ。

 平野

 毎試合チームに迷惑を掛けていたので、少しは貢献できたかなと思う。初本塁打は覚えてます。やっぱりうれしい。吉竹、広沢両コーチからも『思い切っていけ』と後押しされてましたから。

 5安打を放った05年4月2日の日本ハム戦(札幌ドーム)以来、3年ぶりの1試合4安打。これで今季は左投手に対し、26打数10安打、打率3割8分5厘と、まったく苦手意識はない。この日は偵察要員の関係で今季初めて1回裏から右翼を守った。攻守で見せる器用さは、グラウンド外でも変わらない。

 昨年11月の移籍発表。律義に黒髪で会見に臨んでいた平野は、開幕前の3月中旬、ヘアカラーを少しだけ茶色に変えた。「阪神はオリックスと違っていろんな人に見られるから、僕だけ堅い感じで浮いていても…」。早くチームになじむ目的だったが、どんな状況にも順応しようとするのが持ち味。それが、この日の試合でも発揮された。

 この日の勝利でチームは20勝リーグ一番乗り。阪神としては2リーグ分立後、史上最速のペースでの20勝到達だ。新戦力として、足で、バントで守備でチームに新風を吹き込んできた男が、この日は豪快にバットで白星を届けた。【福岡吉央】