<中日7-0広島>◇8日◇ナゴヤドーム

 マサの次はケンシンだ!

 中日先発のエース川上憲伸投手(32)が8回5安打無失点に抑え、今季2勝目を飾った。川上は直球、変化球とも文句なし。約2年ぶりの完封こそならなかったが、無四球で零封。前日1年ぶりの復活星を挙げた山本昌に続き、今度はエースが完全復活した。中日は今季最多の貯金「9」とし、阪神が敗れたため首位とのゲーム差は「2」と縮まった。

 ガッツポーズを出すシーンはなかった。初めて得点圏に走者を置いた7点リードの8回無死一、二塁。代打森笠に二ゴロを打たせた。荒木が一塁走者梵にタッチして一塁送球で併殺。「走者の足も速いし、1死二、三塁と思ったけど、荒木が判断よくゲッツーをとってくれた」。続く天谷を空振り三振に仕留めると、静かにマウンドを下りた。

 エースの仕事だった。最速144キロの直球と多彩な変化球を駆使。8回を5安打無失点、しかも無四球で9奪三振。7回まで二塁を踏ませない抜群の安定感だった。「最近では1番よかったと思う」。06年6月6日交流戦のロッテ戦以来の完封勝利も視野に入ったが「限界も近かったし、スタミナもなかったですよ」と117球の交代に納得。9連戦はここまで1試合平均4・6人の投手をつぎ込んできたが、この日は川上と9回1イニングの長峰だけ。疲れが出ていた中継ぎ陣に貴重な休養をもたらした形だ。

 先発復帰を待つ4月末。「チーム防御率1点台にはひとつ秘密があるんです。それは僕が投げていないからですよ。ハハハ」と乾いた笑いを見せたことがあった。新たな戦力、吉見、川井、チェンらの活躍で4月終了時のチーム防御率は驚異の1・88。だが川上の防御率は4・58だった。「最優秀防御率」が目標だけに予想外の数字に笑うしかなかった。だが先発復帰後は15イニング連続無失点となって防御率は2・48まで回復。「無失点は続けていきたい」と意欲を見せた。

 中6日の本来のサイクルで今季2勝目。急性骨髄性白血病と闘う渡辺隼大(はやた)くん(12)と、オフに約束した今季初白星の勝利球もすでに手渡しており、気がかりもなくなった。エースは完全復活を印象付けたが「復活といわれると1年ぐらいやってない感じでしょ。とにかく目の前の1勝を大切にしていきます」と照れ笑いした。前日の山本昌に続き、川上の快投。首位阪神追撃へ、態勢は整いつつある。【益田一弘】