<阪神3-1横浜>◇11日◇甲子園

 久しぶりの大歓声を背中いっぱいに受け止めた。一塁ベースを全力で駆け抜け、後ろを振り返ると、砂ぼこりの中で赤星が笑顔を見せていた。連敗の嫌な流れを断ち切るためにも、どうしても欲しかった先制点。それをたくさんの期待が詰め込まれたバットで、たたき出した。

 初回1死三塁。カウント2ー1と追い込まれた後、横浜先発ウィリアムスの外角への緩い変化球を引っ張った。打球は前進守備の石井のグラブに収まるが、赤星が必死のスライディングで生還。ベンチのムードを一気に明るくさせた。

 「初めて連敗して(前日は)雨で流れてたし、最初に回ってきたチャンスで点が入らないと雰囲気が悪くなる。何としてもね。打った瞬間は『うわ~』って思ったけど、走りながら歓声が聞こえて、セーフになったんだと。赤星がよく来てくれた。スーパープレーですよ」

 3回にも魅せた。無死一、三塁から、真ん中低めの直球をきれいにレフト前に運んだ。1、2番に続く連打は、8試合連続となるヒット。再び赤星を本塁に迎え入れた。

 「追い込まれて何とかランナーを返したかった。岩田も粘り強く踏ん張って投げてくれていたし、赤星も平野もしっかり見極めて塁に出てつなげてくれている。気持ちも高ぶるし、本当に感謝してます。打率がいいのも、もちろん2人のおかげ。そしてファンの皆さんの声援にも乗せてもらってます」

 感謝の気持ちはこれだけではない。この日は母の日。スタンドには、広島に住む両親や家族を招待していた。「父ちゃん母ちゃんや家族もみんな見に来てたから」。新井を陰で支えてくれている一家の前で、しっかりとバットで思いを伝えた。お立ち台では、スタンドの中に家族の顔を見つけると、大きく手を振り、笑顔を振りまいた。

 これで新井が打点を挙げた日は無傷の15連勝と、不敗神話をまた1つ積み重ねた。負けの翌試合では、11試合中9試合で打点を記録し、打率も3割5分5厘と絶好調。だが決して油断はしない。「まだ5月なんで今から頑張っていきたいと思います」。慢心とは無縁の男が、5月もチームを白星街道へと導いていく。【福岡吉央】