<横浜4-3巨人>◇13日◇長野

 横浜仁志の打球が左前に抜け、今季初のサヨナラが決まった瞬間、ベンチは歓声に包まれた。3-3の延長10回1死三塁、巨人越智のフォークを強振した。「カウント0-2で、まともにストライクを取ってこないと思いつつも、気持ちで引いてしまうと悔いの残る場面。1回、フルスイングしようと思った」。言葉どおり、強い気持ちが乗り移った一打だった。

 選手全員の粘りが実った。先発ウッドは6回3失点で降板も、佐藤、小山田と中継ぎが0点に抑えた。すると7回、村田の2ランで追撃開始。2-3で迎えた9回、マウンドにはかつての同僚、日本最速男クルーン。先頭内川は「振り遅れないよう、なんとかしないといけなかった」とバットを一握り短く持ち、右前打。1死後、代打ビグビーが死球で一、二塁。吉村はバットを折られながらも同点の中前打を放った。「気持ちです。内川さん、ビグビーとつないでくれて」。

 勝利の裏に、大矢監督の決断があった。今月は全25試合中、関東圏外が17試合。移動日なしの連戦も多い。雨天中止だった10日の阪神戦(甲子園)、大矢監督は野手を練習休みにした。最下位という現状で、練習という選択肢もあったはず。だが、コンディショニング担当の塚原コーチは「あの休みは大きかった。練習で選手の動きを見ても、修正のためのストレッチをさせる必要がなかった」と疲労除去の効果を口にした。

 ベンチに残った野手は、第3捕手の黒羽根だけ。総力をつぎ込んで今季巨人に初勝利の大矢監督は「粘ったかいがあった。これで勢いが出るんじゃないか」。交流戦前、最後の6連戦を白星スタート。劇的勝利を浮上のきっかけにする。【古川真弥】