<オリックス3-7阪神>◇21日◇スカイマーク

 嫌な嫌なムードを阪神平野が一振りで吹き払った。逆転されて迎えた7回、無死満塁から期待の代打今岡、赤星はともに内野ゴロに倒れた。スタンドは「あ~あ」。だが、2死から打席に立った平野が、古巣相手に右翼線へ走者一掃の逆転三塁打を放った。この試合までヤクルト、オリックスに気が抜けるような連敗。そんな流れも吹き飛ばす一打となった。これで阪神は水曜日8連勝。

 気持ちよく宙を舞った。169センチ、65キロ。小柄な体で三塁ベースに思い切りダイブ!

 黒土が一気に、ユニホームにこべりつく。起き上がると、敵地が大歓声に包まれていた。「絶対打たないと、という強い気持ちで打席に入った。いろんな意味でうれしかった」。平野が元本拠地で、ド派手な1人舞台を演じた。

 オフにオリックスから移籍。古巣のことは「あまり意識はしなかった」と話すが、かつて走り回った球場で躍動した。2点リードを許した直後の7回だ。無死満塁から、得点できないまま2死満塁となった。追い上げムードがしぼみかけた時、猛虎を救う一打を放った。オリックス菊地原の低めスライダーを泳ぎながらも右翼線に運び、グングン加速して三塁を陥れた。走者を、そして嫌な雰囲気を一掃する逆転打。左対策として送り込まれた相手を見事に粉砕し、勝利をグッと引き寄せた。

 5月7日、1人の男に勇気づけられた。左ひざ手術からの復活を期すオリックス清原が、ウエスタン広島戦(京セラドーム大阪)で満塁走者一掃の逆転二塁打を放った。「僕はキヨさんのひざの状態を知っている。試合に出るだけで本当にすごいのに…」。オリックス時代は待ち受け画面を清原の写真にしたこともある。新聞、テレビ、インターネット…。今でも情報をチェックするほど慕う大先輩の、傷だらけの肉体からパワーをもらった。

 昨年まではケガにも悩まされ、フルシーズンを戦い抜いた経験がない。ましてや、プレッシャーがかかる移籍1年目。最近は疲労の色も見られ、13日からの北陸遠征では3試合ノーヒット。岡田監督は言う。「そんなにフルでやっていなかった。金本みたいに鉄人じゃないから。2日ほど休ませたが、元気になったら打つやろ」。指揮官の配慮で2試合欠場し、体を休めた。復帰後はこれで3戦連続ヒット。もっとも本人の気力はまだまだ尽きない。疲労の具合を聞かれても「大丈夫です」と言い張った。清原とは体のサイズは違うが、劣らぬ闘志を見せている。

 9回の最終打席は遊撃内野安打で一塁にヘッドスライディング。「(阪神でも)ダイブを見せて欲しい」。清原のエールにこたえるかのように、ガッツむき出しでプレーし、チームの快進撃を支えている。連敗を「2」で止め、これで水曜日は8連勝。平野のバットで「ハッピー・ウェンズデー」は次週へ続く。【佐井陽介】