<阪神2-1西武>◇26日◇甲子園

 阪神平野の技がサヨナラへの道を切り開いた。11回裏1死から赤星が内野安打で出塁。1ボールからの2球目だ。一、二塁間の方向に絶妙のセーフティーバント。がら空きになった一塁ベースへ駆け抜けた。「(コーチの)吉竹さんや山脇さんの指導がやっと出た。ああいう場面のバントが(相手に)1番効くんです」。小技を侮るなかれ。西武という大木をじわりじわりとぐらつかせ、金本のサヨナラ打につながった。

 15歳の決断が違った方向だったら、この夜の阪神ファンの歓喜はなかったかもしれない。「僕はサッカーも結構がんばってたんですよ」。サッカーも盛んな神奈川県で、中学時代までは野球と両立してプレーしていた。快足の左ウイングとして、地域でも名の知れた存在。強豪の高校にも誘われたほどだ。グラブとバットを選択し、桐蔭学園へ進学。ピッチを駆けた俊足がこの日、相手の脅威となった。

 5回には貴重な先制打を放っていた。2死一、三塁でカーブにうまくバットを合わせ、中前に運んだ。「目の前で赤星さんのつなぐ意識、走塁を見せてもらっているので、自分も何としてもつなごうと思った」。リードオフマンの取り組む姿勢を吸収しようと日々、貪欲(どんよく)だ。11回の場面を岡田監督が振り返った。「赤星に『走っていい』と言っていたが、なかなかスタートが切れなかったようだ」。そこにすかさず平野がノーサインでセーフティーを敢行。「何ができるか考えていたら、ああいう形になった」。お互いにカバーし合う。これが今年の猛虎の強みでもある。

 5打数3安打の活躍で、存在感を発揮した。逆転三塁打を放った21日のオリックス戦以来となる4度目の猛打賞。前日まで2戦連続で赤星がヒーローになれば、この日の平野は文句なしの助演男優賞。12球団でも最高の1、2番コンビに近づきつつある。【田口真一郎】