<阪神8-4ロッテ>◇29日◇甲子園

 ロッテ清水が挑んできた直球勝負に、新井が気迫で応えた。2点をリードされた3回2死満塁。追い込まれた後の3球目、141キロに食らいついた。打球は一、二塁間を抜ける同点タイムリー。「勝負強い男」が一気に流れを引き寄せた。

 新井

 真っすぐに力があったけど、満塁だったし追い込まれていたので、何としても食らいついていこうと思っていました。抜けてくれてよかった。勝つことが一番ですからね。

 勝ち越し点も新井が呼び込んだ。5回2死から始まった猛攻だった。併殺で走者がいなくなった後、9番安藤が右前打で出塁。赤星が四球を選び、関本が中前打で続く。再び2死満塁で新井。清水の外角低め145キロをまたも一、二塁間に運んだ。打球は根元に好捕されたが、新井の激走が悪送球を生む。「勝負強さ」は運まで味方につけた。

 この流れに5番葛城が乗った。2死二、三塁から金本が敬遠された。葛城はそれまで2打席連続三振。ロッテベンチでは、当然の策が葛城を燃えさせた。意地のひと振りは、打球を右中間に運ぶ。走者一掃の二塁打で清水をマウンドから引きずり下ろした。

 「(目の前の敬遠に)久しぶりに燃えました。監督も『行け!』と言ってくれたしね。1、2打席目は低めの球に手を出してしまっていたので、気をつけていた。みんなでつないでくれたチャンスだったし、あそこで点を取らないといけないしね」

 その瞬間、ベンチで思わず表情をほころばせた岡田監督も「2点をもらった後の葛城の二塁打や」とほめたたえた。5回2死走者なしから5点を奪う、つながる猛虎打線。これで今季の逆転勝ちは18度目と、セ・リーグ断トツのトップを走る。そして2位中日に5・5ゲーム差と独走体制も固めた。「逆転の虎」は、相手のわずかなスキも見逃さずにキバをむく。【福岡吉央】