<日本ハム2-1阪神>◇5月31日◇札幌ドーム

 下を向き、走って一塁ベンチに戻る。7回を投げ終えた阪神岩田は、必死で悔しさを隠した。「しっかり投げないといけないところを、投げられなかった…」。痛恨の2失点を振り返り、試合後は自分を責めた。

 新井の先制ソロで1点先制した直後。1-0の7回裏。少しだけ崩れた。1死から連打を浴び、二、三塁。6番スレッジに3連打となる左前同点適時打を許し、歯車が狂った。なおも1死一、三塁で7番小谷野の三塁へのゴロをバルディリスが後逸する。好守の男がエラー。不運にも泣き、逆転の2点目を奪われた。

 ただ、それまでは完ぺきだった。直球、変化球問わず、低めにボールを集めた。6回を終えた時点で4安打無失点。日本ハムスウィーニーとの投手戦で、1歩も引かなかった。鋭く、大きく曲がるスライダーを武器に7奪三振。8回を投げきり2失点(自責1点)は、責められる内容ではない。

 「ずっと良いけど、今日は特に良かった。援護があれば勝ち投手やろ。何も言うことはないよ」。岡田監督は左腕を絶賛した。開幕からローテを守り、登板した9試合はすべて5イニング以上を投げた。先発の役割をきっちり務めあげる男に、指揮官の信頼は厚くなるばかりだ。

 これで防御率は1・61。この日、楽天戦で炎上した広島高橋に代わり、セ・リーグトップに浮上した。すでにオールスターのファン投票の先発投手部門にも、初めてノミネートされている。3年目の若虎が、スターへの階段を上っている。【佐井陽介】