<阪神4-1オリックス>◇9日◇甲子園

 何ともほほえましい光景だった。ベンチから金本が先頭でお立ち台に向かう。続けて出てきた矢野が腕を引っ張ってきたのは、ヒーローンタビューを恥ずかしがる下柳だった。その姿にスタンドからは歓声とともに温かい拍手が送られた。

 「何かもっと活躍して上がるイメージやけど。おまけみたいやん。でも3人で上がるのは1つの目標だったしね」

 今年40歳を迎える18年目のベテラン捕手が、巧みなリードで、そしてバットで、5月14日以来、3試合勝ち星から見放されていた同級生の下柳を引っ張った。4回には、1死三塁から右翼に犠牲フライ。せまい球場なら本塁打という大飛球で、チームに4点目となる追加点をもたらした。

 「シモも頑張っていたし、いい流れで皆がつないでくれたからね。何とか仕事ができてよかったよ」

 6回には3試合連続安打となる中前打。女房役はバットでも貪欲(どんよく)に勝利を追い求め続けた。

 今年40歳を迎えるチーム最年長トリオでのヒーローインタビューは、キャンプ中から掲げていた目標だった。「また3人で上がれればいいね。シモもカネもすごいから、オレも負けないようにしないと。少しでもチームを引っ張っていけるようにね」。縁の下でチームを支える矢野の額には、キラリと汗が光っていた。【福岡吉央】